「Get Wild」男と
「DESIRE」女の恋を妄想
私が「Get wild」を聞くたびに一緒に思い出すのが中森明菜の「DESIRE-情熱-」である。
片やワイルドかつタフに生きろ、君だけの夢を見つけられるよ、と諭す熱いゲワイ男。
車で夜道を暴走しながら、車道で踊る小娘を発見しても危ないと頭ごなしに注意せず、そっと心の中で励ますあたり、余裕がある男性である。
対する「DESIRE」のゲラップ女子はなかなか強気。「立ち上がれ情熱の炎を燃やせ。夢は見る前に醒めたらなんにもならないからね」。
ぬおぅ、ゲワイ男と人生哲学が一緒じゃないかッ。強がりで寂しんぼなのも一致。もういっそ付き合っちゃいなよYOU達!
ゲラップ女子はダンスに夢中になっているようだし、エエッもしかして「車道で踊るあの子」と同一人物だったりして。キャッキャッ。発売年の前後関係が合わないんだけど気にしない! 妄想最優先である。
勝手に暑苦しいお見合いオバサンみたいに盛り上がったがいや待て私。こういった上目線なタイプは男も女も、自分と逆のユルくて絶望主義の太宰ピープルに惹かれるのが悲しき恋愛のセオリー。
ということで、この2人はお付き合いしても短期間で別れ、それぞれダメダメ人物と交際。「夢は見る前にあきらめちゃダメ!」と励ますのだろう。
妄想し尽くしてスッキリしたので「Get Wild」論に話を戻そう。「Get Wild」の大きな特徴、それは「pain」である。カラオケでこの曲を歌うと、中盤でペインペインペインペインと連呼しなくてはならず、赤巻紙青巻紙黄巻紙状態でけっこう難しい。
調べてみると意味は「苦痛」……。なるほど。ゲワイ男が放つのは、明日が怖いのは君の痛み僕の痛み誰かの痛み。
でもこれはあなたの夢私の夢誰かの夢。 君だけが守れるものを守り、さあ、野生的に強く攻めよ、そしてチャンスと幸運を掴めよというジェントルで前向きなメッセージだ。
「君も僕と同じ痛みを持っている」。このさりげなく柔らかな共感性、沁みる!
2019.02.16(土)
文・撮影=田中 稲
画像=文藝春秋