【BL体験に年齢は関係ない。】
2013年頃のことです。最高齢の腐女子として当時102歳の俳人・金原まさ子さん(17年逝去)が一躍マスコミに登場し、BL界隈に強いインパクトを残しました。金原さんは1983年72歳のときに観た映画『戦場のメリークリスマス』の坂本龍一とデビッド・ボウイの接吻シーンで突然目覚めたといいます。18年7月現在風に言うと、それは龍一とボウイの関係性に“尊み”を感じ、“しんどい”ということですね。なるほど! それ、わかりみすぎるし。腐女子あるあるです。というか、BLに限らずどんなジャンルでも“沼にハマる”瞬間ってこんな感じだと思います。
ひとはBLをどんなきっかけで読みはじめ、読むことで何が満たされるのでしょう? その問いにひとつの答えを出そうとしている作品からBL入門しませんか? 鶴谷香央理さんの『メタモルフォーゼの縁側』は、歳の差のある腐女子ふたりがヒロイン。物語は「知らない間に 時間って経ってるのよね」という75歳の主人公・市野井雪のモノローグではじまる。久しぶりに本屋に入った雪は、BLとは知らず表紙の絵がきれいという理由で、マンガを買うことに。そのレジ打ちを担当したのが、もうひとりの主人公・バイト店員の佐山うららだ。女子高生らしからぬ身だしなみの大雑把さに幼さが見て取れるうららは、隠れ腐女子。後日続刊を買いに来た雪の「なんて言ったらいいのかしら……応援したくなっちゃうのよ」というBLの魅力の正鵠を射た発言をきっかけに、ふたりは心を通わせる。次巻を読みたい、好きな作家の同人誌を買いたい。萌えこそ明日の日常を生きる原動力だ。
『メタモルフォーゼの縁側』
(既刊1巻)
期せずしてコメダ優先生のBLマンガ『君のことだけ見ていたい』にハマってしまった75歳の老女と、考えすぎて無口だったり挙動不審になりがちな女子高生の心温まる交流を描くことで、結果的にBLマンガの魅力の本質を解き明かす話題作。
鶴谷香央理 KADOKAWA 780円
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福田里香(ふくだりか)
お菓子研究家。『R先生のおやつ』(文藝春秋)、『まんがキッチン おかわり』(太田出版)、文庫版『まんがキッチン』(文春文庫)が好評発売中。
Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2018.10.29(月)
文=福田里香