「青春」という言葉の持つニュアンスとは?
山口 柳沢良太もプロデューサーとしては、新鋭ですよね。現役アーティストとしてバリバリの時に、他のバンドのプロデュースをやるって珍しくないですか?
伊藤 現役アーティストがプロデュースを同時にやっていることは珍しくないかもしれないですが、彼はまだ27歳で自身のバンドもメジャーデビューして7年ほどですからね。この若さでバンドプロデュースするっていうことはよっぽどプロデュースにも関心があるし才能もあるんでしょうね。そういえば数年前にSCANDALに楽曲提供もしていました。あの辺からプロデュースってことに目覚めているのかもしれないですね。
山口 多面的に活動するのは良いことですね。プロデュースとバンド活動を線引きするのは業界人的な感覚で、音楽家にとっては区別は無いですよね。
伊藤 さて、話をShout it Outに戻しますが、このバンド名も曲タイトルも詞も、彼らから表現される言葉には飾りっ気がなく恰好をつけていないように感じます。いやむしろロックにしては軟弱だし、可愛らしい、女々しいようにも思う。ロックが“恰好をつけるもの”だった時代とは違って、自然体であることの美学を言葉にしているんじゃないかな。
山口 自分たちの世代のセンス、2016年という時代の空気をよく表していますね。
伊藤 彼らの時代ですからね。意識して表現しているかはわかりませんが、時代にフィットしているというか、彼らの言葉が時代そのものというか。曲の冒頭に出てくる「青いアイスキャンディー」、これを“可愛らしさ”と思うか、“儚さ”と思うか。2番の始まり「真夜中に書いた君へのラブレター」、これを“手垢のついたフレーズ”と捉えるか、“絞り出された感情”と捉えるかでこの曲の受け取り方は全然違う。「青春のすべて」というタイトルも50年くらいのサイクルで一周してきたのか、2016年にデビューするロックバンドのタイトルとして相応しいものに思える。
山口 青春って臆面もなく言えるのが素敵だと思いました。平均年齢19歳のバンドだから許されることではありますが。
伊藤 2005年に“修二と彰”の「青春アミーゴ」って曲をプロデュースしたんですが、あの時は80年代の青春を意識して、あえて昭和感を匂わせる楽曲を演出をしました。“青春”って言葉にはそれぞれに世代がもつ青さがあるんですよね。
山口 あの「青春」は昭和な響きですね(笑)。
2016.06.29(水)
文=山口哲一、伊藤涼