音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
Czecho No Republic「Forever Dreaming」

アニメとのタイアップは海外進出を促すか?

伊藤 今回はメジャーデビューから3年目、5人組ポップロックバンド“Czecho No Republic”。インディーズ時代から数えて6枚目のシングルとなる「Forever Dreaming」はフジテレビ系TVアニメ「ドラゴンボール超」のエンディングテーマです。

山口 よいタイアップが取れてますね。レーベル側の意欲を感じます。音楽市場も多様化・細分化されていて、TV番組のタイアップの効果というのは以前に比べれば、非常に小さくなっていますが、人気アニメ番組のテーマ曲は、シングルのセールスが底上げされて、チャートインすることで、マスメディアでの露出チャンスが増えるというメリットがあります。

伊藤 Czecho No Republicのサウンドと「ドラゴンボール」、あまりイメージがわかなかったけど、彼らのデビューシングルも「ドラゴンボール改」のエンディングテーマ。このときはオリコン初登場24位で、やっぱり「ドラゴンボール」効果はあったんでしょうね。

山口 加えて、アニメのタイアップは海外のJカルチャー好きのユーザーとの架け橋にもなるんですよ。海外でのライブ活動のキッカケにもなり得ますね。

伊藤 それは大きいですよね。海外を目指しているアーティストでなくても、海外にファンが多くいるとなれば、自然と海外に目が向くし、もちろん集客できるとなればライブもやりますよね。Czecho No Republicが海外を視野に入れているかはわかりませんが、海外進出のチャンスではありますよね。あと彼らの注目するべきところは「CDショップ大賞」に2回もノミネートされていることですかね。音を聴くと音楽好きが選びたくなる感じ、わかりますね。

山口 CDショップ大賞は、書店員が選ぶ「本屋大賞」に触発されてできたアワードですね。RECORD STORE DAYなども行っているミュージックソムリエ協会が主宰しています。元ファイブ・ディー社長の佐藤剛さんが会長になりました。僕にとっては、尊敬する業界の先輩です。音楽事務所としてTHE BOOM「島唄」などの実績があります。近年もソノダバンドをデビューさせたり、由紀さおりさんとピンク・マルティーニとのコラボを仕掛けてiTunes全米ジャズチャート1位を獲得したりで、プロデューサーとして活躍されています。業界でもレピュテーションが高い方ですし、CDショップ大賞の影響力も上がっていくのではと期待しています。

伊藤 佐藤剛さんは、山口さんが大推薦している『上を向いて歩こう』(小学館文庫)〈外部サイト〉の著者でもありますよね?

山口 そうです。最近は執筆活動も積極的にされていますね。「上を向いて歩こう」は、坂本九が歌って、ビルボード1位になった日本で唯一の曲ですね。その名曲が出てきた背景を精緻に調べて丁寧にまとめあげた名著です。日本の芸能界、音楽業界の草創期のことがよくわかる本です。文庫化もされ、電子書籍版もあります。本コラムの読者には是非読んでほしいです。

2016.05.15(日)
文=山口哲一、伊藤涼