世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。
第134回は、芹澤和美さんが中国内陸部の2つの大都市を訪れ、ご当地ならではの美食を堪能しました。
「ドレスコードは水着」でもおかしくないアツアツ火鍋
2016年2月に日本から直行便が飛ぶようになり、気になっていた重慶と武漢。ラッキーなことに、この6月、両都市を訪れるチャンスに恵まれた。
重慶は中国の直轄市でもあり、重工業で発展した内陸部の大都会。高層ビルが立ち並ぶ街中で異色の雰囲気を放っているのが、洪崖洞(ホンヤートン)と呼ばれる建物だ。「吊脚楼様式」という伝統的な建築法で建てられているが、実は2006年にできた、新しい観光スポット。
日本から直行便で約4時間15分の重慶での滞在時間は、わずか17時間。限られた時間は、ここ洪崖洞で過ごすことに。
右:11階建ての建物は複雑に入り組んでいて、途中に滝があったり、緑があったり。
ここはレストランやホテル、バー、土産物店が並ぶ、いわばショッピングモール。でも、屋台街を模した一角や、複雑に入り組んだ構造や渡り廊下、赤提灯がぶら下がる通りは“オールド重慶”の雰囲気たっぷりで、ぶらりと散策するのが楽しい。
重慶、武漢といえば、中国では南京と合わせて「三大火炉(三大かまど)」と呼ばれる、夏は高温多湿の街。
どうせ蒸し暑いところに行くのなら、汗をかきながら本場の火鍋を食べよう! と向かったのは、洪崖洞の中にある火鍋店。オーダーは、中国の一般的な火鍋店と同様、鍋底(スープ)を選び、具材を注文するシステムだ。私たちが選んだ鍋底は、辛くない白湯スープと辛い麻辣スープの2種類が楽しめる、「鴛鴦」と呼ばれるもの。
右:香菜や辛味噌、ピーナッツダレ、ごま油など、タレと薬味はブッフェ式で好きなものを選べる。
食べるほどに身体がどんどん温まっていく本場の火鍋は、辛いだけじゃなくて深みがある。スープに使っているナツメや生姜は身体にもいいし、唐辛子の「辣」だけでなく、山椒の「麻」の痺れるような辛さが、病み付きになるのだ。冷房は効いているのに汗がどんどん出てきて、デトックスされた気分。
お腹も満たされ、爽快な気分で店の外に出ると、洪崖洞がライトアップされて幻想的な風景が広がっていた。
2016.06.28(火)
文・撮影=芹澤和美