「……いるじゃん。何やってんだよ、あいつ……」
「……帰る?」
「そうだな……」
Sさんたちが踵を返してエレベーターホールに戻ろうとしたそのときでした。
ゴトッ。
ゴンッ。
背後のBさんの部屋の中から、何か重い物が落ちるような物音が響いたのです。
「……いるじゃん。何やってんだよ、あいつ……」
呼び鈴を鳴らしたのに無視を決め込まれたと思ったSさんは、若干の苛立ちを覚えながら、背をかがめてドアポストを覗きました。
「おーい、B~。Sだけど~?」
細長いドアポストから見える僅かな視界。部屋の明かりはやはり点いたままでした。
廊下の真ん中に薄汚れた一足の“赤いスニーカー”がポツリと置いてありました。
「うっ」思わず顔をドアポストから離したSさん。
「え、なに?」
隣で騒ぐ元同僚を無視して再びドアポストを覗き込みました。
そこで初めて部屋の中に空のペットボトルが何本も転がっているのに気がつきました。
割と几帳面な性格をしていたBさんがこんな風にゴミを放置しておくとは考えられず、Sさんは不審に思ったそうです。
実に十数本はあるかというペットボトル。









