松たか子さんとは今年2回目の夫婦役

――今回演じられるミュージカル俳優という役には、どのようなイメージをお持ちですか?

 宮藤さんが書いた歌詞にもあるんですが、姿勢と滑舌が良いイメージ。最近はミュージカル俳優と舞台俳優の垣根はなくなってきてますが、昔は「僕、ストレートプレイは初めてなんだ」と、言っている方もいて「ストレートプレイって何?」って思ったりもしてました(笑)。

 それこそコントにも演劇とお笑いの壁があったので、俺らが、コントをしているときに芸人の方々に「演劇畑のやつが来たぞ」って嫌な顔をされたこともあったなぁ。なので今のほうが雰囲気はいいですよね。こないだバンドのライブもよしもとの方々と一緒にやりましたし。

 ただ、やっぱりミュージカル俳優の方は発声方法が違います。綺麗だし。僕ら、習ってないからね。今回、息子役を演じる峯田(和伸)さんは、ミュージシャンですが、ミュージシャンの方々も彼らならではのリズムの取り方がありますよね。セリフをリズムのようにとらえているというか。共演する峯田さんや、よーかいくんさんとの共演も楽しみです。よーかいくんって、名前もすごい(笑)。

――今回の役作りに向けて、発声のトレーニングなどはされていますか?

 以前、声楽の先生に教えてもらったときに首の筋をちぎれるんじゃないかってくらい強めにつかまれて、それが痛くて痛くて。だからもう習いません(笑)。なので、音楽の用語もいまだにわかりません。

――今回、離婚調停をめぐる妻役を演じられるのは松たか子さん。お二人はこれまでも映画『夢売るふたり』や、ドラマ『しあわせな結婚』でも夫婦役を演じていらっしゃいます。松さんとなぜ夫婦や別れた恋人といった関係を演じることが続くのだと感じていらっしゃいますか?

 なんでなんでしょうね。そういえば別れたとか、別れそうな関係ばかり演じてますね。

 松さんって、大女優でいらっしゃるのに、そんな雰囲気を微塵も出さないのがすごいんですよ。ご一緒しているときは本当にリラックスできるし、ストレスなく演じられます。さっきも取材で一緒でしたけど、気を遣わなくていいからとっても心地よくて。

 撮影中とか稽古中は、お互いベラベラ喋るタイプではないので密にコミュニケーションをとるわけではないんですが、何も相談せずともうまくいく。かといって堂々としているわけでもなく、自信なさげにしているんですよね。面白い方ですよね。

阿部サダヲ(あべ・さだを)

1970年、千葉県生まれ。1992年より大人計画に参加。舞台『冬の皮』でデビュー。22年にNODA・MAP番外公演『THE BEE』にて読売演劇大賞優秀男優賞、25年にドラマ『不適切にもほどがある!』にて芸術選奨文部科学大臣賞放送部門受賞。また、パンクコントバンド「グループ魂」ではボーカルを務める。12月26日にはLINE CUBE SHIBUYAにてワンマンライブを開催。

大パルコ人5オカタイロックオペラ『雨の傍聴席、おんなは裸足…』

離婚を決意しているミュージカル俳優(阿部サダヲ)と演歌歌手(松たか子)の夫婦。二人は長男(峯田和伸)の親権を巡り、法廷で泥沼の争いを繰り広げます。兄は発達障害がある、だが天才音楽家……かもしれない――。その可能性を信じて疑わない夫婦が、あの手この手で世間の同情を買おうとしたり、過去の恥部や醜聞に乗じて好感度を上げたり下げたりします。子供に過度の期待をする両親の間で、その重圧を感じながら成長していく兄と天真爛漫な弟(黒崎煌代)。この家族の未来はどこに向かっていくのか……

作・演出:宮藤官九郎
音楽:上原子友康(怒髪天)/峯田和伸(銀杏BOYZ)
出演:阿部サダヲ、松たか子、峯田和伸、三宅弘城、荒川良々、黒崎煌代、少路勇介、よーかいくん、中井千聖、宮藤官九郎、藤井隆
https://stage.parco.jp/program/okatai