子どもが、私のことを社会の一員に戻してくれた

――ご結婚、ご出産、そして40代を迎えた今、これまでと比べてお仕事への向き合い方に変化はありますか?

 大きく変わりました。今までは演じるという仕事のために24時間をフルに使っていて、本番にピークを持っていくにはどうすればいいのかということで頭をいっぱいにしていました。自分でも変態的だと感じるほどお芝居に時間をかけていたんですが、今はもうそれはできません。

 子どもと過ごす時間を何より大切にしたいと思っているので、1年で出演できる作品は減ってしまいましたが、お芝居に失礼のないよう、自分にできることを探しています。

――24時間、ずっとお芝居について考えることができていた頃に戻りたくなることはありますか?

 あの頃に戻りたいとは思わないですね(笑)。体力的にも、もうあの生活はできないかな。俳優って特殊な働き方だと思うので。子どもが、私のことを社会の一員に戻してくれた感覚です。

 自分の人生にこれほど大きな変化が訪れたことは、本当に良かったと感じていますし、演じることにもこれまでとは違った楽しみ方ができるようになりました。いまの自分が「楽しい」と思えるかどうかで仕事を選べるようになったのも、嬉しい変化の一つです。

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