今、イタリアで人気なのが“アペリチェーナ”という新スタイル。“アペリチェーナ”の楽しみ方や、“アペリチェーナ”を楽しめるレストランをご紹介。


「アペリティーボ+夕食」居酒屋感覚の新スタイル

 夜の帳が下り、街並みがオレンジ色にライトアップされ始めるころ、パレルモの街は再び賑わい出す。一日の疲れを癒やし、リラックスして過ごす夕暮れのアペリティーボは、「人生で、最も大切にしている時間」という人もいるほど、イタリア人に愛されている大事な習慣だ。

 さて、アペリティーボとは食前酒のこと。ラテン語の“アペリティヴス(開ける)”に由来し、胃を開ける=食欲増進のため食前酒を飲む習慣が、古代ローマ時代にはすでにあったという。

 18世紀にトリノで“ヴェルモット”が誕生し、商品化されてから、様々な食前のカクテルも生まれた。今やアペリティーボは、時間そのものを楽しむ概念としてすっかり定着。生活の一部になっている。

 そして昨今人気のアペリチェーナは、そんなアペリティーボと、夕食を意味するイタリア語“チェーナ”を組み合わせた造語。アペリをかねた夕食、要するに、食事をしながら楽しむアペリティーボだ。

 シチリアでは夕食は、南欧らしく21時ごろからと遅いが、アペリチェーナの場合、始まるのは19時ごろ。一杯飲みながら、いろいろな料理を少しずつ盛り合わせたプレートや、アラカルトの一品料理をわいわい気の合う仲間と囲めば、まるで居酒屋。日本人にとっては、馴染み深いスタイルかもしれない。

 時代とともに変わりゆく、アペリ事情。変わらないのは、人生を豊かに演出するものであるということ。古代ローマ人のように食欲増進しながら、パレルモ居酒屋で、イタリア的人生の愉悦に浸ろう。

●注目のレストラン
CuFu(クフ)

所在地 Via Bott ai, 6 Palermo 
電話番号 331 6003269
https://www.facebook.com/cufu.palermo/

次のページ アペリチェーナは軽めに済ませたい夜にも最適

CREA Traveller 2023 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。