クリームソーダと楽しむ読書

地下室のような屋根裏のような「さぼうる」の空間ではカラフルなクリームソーダも幻想的に。

 私にとって喫茶店は好きな時間に好きなものを味わえる憩いの場所です。一日の終わりに立ち寄って深呼吸したくなるところ。一人で訪れても、店主の方や常連のお客さんの存在を感じられるので、寂しくはないんです。

 歴史ある純喫茶の店内では「活きている」昭和の家具や雑貨の趣に触れる魅力もありますね。そこに本を持っていくと、空いている時間帯であれば自分のお気に入りの席を選べますし、適度に雑音のある環境は読書にピッタリだと思います。もし読んでいる本の中に出てきたものを食べたくなってもすぐに頼めます(笑)。

 中でもクリームソーダは喫茶店以外の場所ではまずオーダーすることがないメニューですよね。そういう意味でも読書の時間を少し特別なものにしてくれる。トレイに載って運ばれてきたときのうっとりする見た目にはいつも心がときめきますし、ソーダ水に浮かんだアイスクリームにスプーンを入れる幸せな気持ちは、本の内容や読んだ場所の風景とともに記憶に残ると思うんです。

 アイスクリームの場合はすぐに食べないとダメですが、クリームソーダは本に夢中になってアイスが溶けてしまっても、最初とはまた違った味の変化を楽しめる。ゆっくりと時間をかけて堪能できるので、実は読書のお供にふさわしいメニューなんです。喫茶店に行くことと本を読むことが結びついて、一時のブームではなく毎日の習慣として根づいてくれたら嬉しいです。

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2015.08.20(木)
text=Chisato Nasu
photographs=Tamon Matsuzono

CREA 2015年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この特集の掲載号

本とおでかけ。

CREA 2015年9月号

街へ公園へ、空想の世界へ
本とおでかけ。

定価780円