CREA2015年9月号(8月7日発売号)「本とおでかけ。」の巻頭企画として、村上春樹さんの書き下ろし旅エッセイが掲載されています。原稿用紙にしておよそ55枚、24ページにわたるボリュームです。
メンバーは、村上さん、写真は都築響一さん、旅の案内人はエッセイストの吉本由美さん。そう、あの「東京するめクラブ」のメンバーです。
期待は高まりますね。
CREA編集部からの「世界中、どこでも好きなところへおでかけください」という申し出に、村上さんが選んだ目的地は、(なぜか)熊本でした。
なぜ熊本だったのかは、原稿の冒頭で明かされますが、村上さんが熊本を訪れるのは実に48年ぶり。18歳のときに、ふらりとひとり旅して以来、二度目の来熊(らいゆう)だそうです(熊本の人は熊本に来ることをこう言うらしい)。当時の思い出といえば、「夜の街でお姉さんに声をかけられて困った」くらいだそうですが、今回はどんな旅になったのでしょうか。
幸運にも同行させていただくことになった私(デスク竹)が、この場を借りてちょっとだけこぼれ話をご紹介いたします。
【熊本こぼれ話 その1】
「小さな書店で秘密の朗読会を決行」
街で猫をみかけると、すぐに立ち止まる猫好きの村上さんと、熊本市街をぶらぶら。向かった先はある書店です。
書店好きには知られた小さな名店「橙書店」さんで、村上さんは「秘密の朗読会」を行ったのです。事前告知はまったくなし。口の堅い常連さんだけにこっそりと案内がまわってきたというスペシャルな会です。
スタートの夜7時を前に、どこからともなく集まった30人。みなさん、「本当に村上さんは来るのだろうか、だまされたんじゃないだろうか」と不安げな表情でしたが、大丈夫です。そこでお店の看板猫「しらたまくん」を撫でているのが村上さんです。
朗読された作品は、「ヤクルト・スワローズ詩集」と題された短篇小説でした。
どんな作品が読まれるのか、と緊張気味に身がまえていた参加者のみなさん。しかし作品のあまりのおもしろさに、会場からはクスクスと笑い声が聞こえてきます。
どこか不思議で、夢のような一夜は、とてもあたたかい雰囲気に包まれました。
この「ヤクルト・スワローズ詩集」の一部は、ヤクルトスワローズファンクラブ公式サイトに掲載されています。ちなみに村上さんは、スワローズファンクラブの名誉会員第2号。第1号は誰かというと、出川哲朗さんだそうです。ハルキストならおさえておきたい、味わい深いトリビアですよね。
2015.08.07(金)
文=CREA編集部
撮影=都築響一、CREA編集部