純喫茶女子・難波里奈さんが読みたい本を片手に訪れる、東京の選りすぐりの喫茶店4店をご紹介します。
» 第1回 【神保町】4色揃ったクリームソーダ「さぼうる」
» 第3回 【銀座】文豪も通った老舗「銀座ウエスト 銀座本店」
» 第4回 【学芸大学】地元で長く愛されてきた「マッターホーン」
◆ 茶房 武蔵野文庫
文学の薫り漂う店内にレモンの黄色が映える
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お店の名前からもわかるように本とのつながりは深く、もともとは早稲田大学の近くに住んでいたご夫妻が自宅の本棚を図書館のように開放した「茶房 早稲田文庫」が始まり。
そこで働いていた日下茂さんが独立して吉祥寺にオープンさせたのがこのお店。濃い黄色が鮮やかなレモンのクリームソーダは1985年の開店当初からある定番のメニュー。かき氷器で砕いた氷に炭酸水とレモンシロップを注ぎ入れ、グラスを陶器の小皿に載せて。アイスクリームはご贔屓の牛乳屋から取り寄せている。
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「クリームソーダ=緑色のメロンソーダというのは思い込み。うちではアイスコーヒーもグラスではなく陶器で出します。何でも“普通”はつまらない」と言う日下さんのポリシーが光っている。
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右:「長居されすぎると困っちゃう!」と言う日下さんだが居心地のよさは抜群。
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● クリームソーダを飲みながら読みたい本
『君がいない夜のごはん』
歌人の著者による「食べもの」にまつわるエッセイ集。食を通して見える生き様と人生観は可笑しくて、ちょっとほろ苦くて、優しい。
穂村 弘 NHK出版 1,400円
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nanba's ここがいい!
静かに過ごすことができて家庭的な雰囲気もよいです。喫茶店で一人食事をするときにこの本のタイトルをよく思い出すので、珈琲ではなくあえてクリームソーダを注文するという、一人ゆえの自由と贅沢を嚙み締めたいです。
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● 今回お話を伺ったのは・・・
難波里奈(なんばりな)さん
東京喫茶店研究所二代目所長。純喫茶をこよなく愛し日本全国を訪ね歩く『純喫茶コレクション』(PARCO出版)の著者。二冊目となるさらにディープな集大成『純喫茶へ、1000軒』(アスペクト)も発売中。
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クリームソーダと楽しむ読書
選りすぐりの東京喫茶店アドレス
2015.08.22(土)
text=Chisato Nasu
photographs=Tamon Matsuzono
CREA 2015年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。