この曲が鬼束ちひろ再評価のきっかけになる?

伊藤 「月光」から15年経ちましたが、シンガーを目指す女子たちにはスタンダードなんですよね。女性シンガーのオーディションで何度か審査する立場になったことがありますが、必ず歌われる曲です。だいたいモノマネが入っちゃう曲でもあるんですよね(笑)。ところで、鬼束ちひろのアーティストへの楽曲提供は初めてだそうです。

山口 そういえば記憶に無いですね。彼女も音楽家として次のPhaseに入る時期でしょうから、才能を活かすのに良い方法かもしれません。

 マネージメントがご家族になってから、ちょっともったいない見え方をしていたので、本作がヒットして、音楽性に注目が集まるようになるとよいですね。稀有な才能を持つシンガーソングライターだと思っています。そんな「夏の罪」から浮かぶ妄想分析は、いかがですか?

伊藤 フラフラ、フラフラ……まるで目が見えていないような足取り。フラフラと公園のフェンスに肩を擦り、フラフラと電柱に膝をぶつけ、フラフラと住宅街を彷徨うように。家に帰ろうと歩き出したが、もう自分がどこにいるか分からない。

 彼女は傷ついている。それはマリアナ海溝のように深く、そして暗い。好きだった男にだまされ、弄ばれ、なによりも大切なものを奪われグチャグチャに壊された。初めての恋心もファーストキスも、楽しかったはずの想い出も親友も、そしてカラダも。すべての邪悪な真実を知って、同時に絶望という気持ちも知った。

 男のことを怨もうとしたがそれもできず、盲目だった自分を怨みたいと思う。だけど、なにかを怨む力さえもう湧いてこない。消えてしまうことを考えながら、フラフラと公園の横を抜けていく。公園からは子供たちの屈託のない笑いが鳴る。それは深海の発光する生物のようで、彼女と同じ調子でフラフラと浮遊している。美しいけど彼女にはみえない。彼女は暗闇のなかの黒となって浮遊しているだけ、フラフラ、フラフラと。

山口 another storyとして曲にしてください(笑)。

花岡なつみ「夏の罪」
ビクターエンタテインメント 2015年8月12日発売
初回限定盤[CD+DVD]1,500円、通常盤[CD]1,000円、
7223枚完全生産限定盤(ピクチャーディスク仕様)[CD]723円(税抜)
■花岡なつみは、2015年3月に高校を卒業し地元・広島から上京したばかり。デビュー曲となる本作は、国民的美少女コンテストの先輩でもある武井咲主演のテレビ朝日系木曜ドラマ「エイジハラスメント」の主題歌として書き下ろされたもの。
■「夏の罪」作詞・作曲/鬼束ちひろ 編曲/安原兵衛
■オフィシャルサイトURL http://www.jvcmusic.co.jp/-/Artist/A025151.html

【動画サイト】
「夏の罪」

URL https://www.youtube.com/watch?v=f-kOrNbRwYI

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2015.07.30(木)
文=山口哲一、伊藤涼