木版画で“見立ての美”にふれる
一年を通して、様々な風情を楽しめる、京都。紅葉が色づく山の風景から秋の深まりを感じ、伝統工芸に写し出す、“見立ての美”は、京友禅、京菓子といった伝統工芸の中で息づいています。
四条通から細い路地を入った一角に店を構える「竹笹堂」は、創業120年の老舗。木版画の摺師として、浮世絵の技術を継承し、伝統的な意匠を現代感覚でアレンジした木版小物まで広く発信しています。
「公園で風が吹いて、木の葉が舞う様子を見て、これが文様などに描かれている“吹き寄せ”なんやな、プクプクと涌くような水の泡から御手洗団子がイメージされたんやとあらためて気づくことがありますね。今は情報がありすぎて感性が鈍くなっていますが、昔の人はこんな身近な事柄にすごく敏感で、多くのデザインが生まれてきたんだと思います。何気なく見ている葉も天気や季節によって微妙に色が違うんですよ」
と、5代目・竹中健司さん。職人としての観察力は特別なことではなく、私たちにも簡単にできることだと言います。
例えば、紅葉などの全体像を見て、一本の木や枝ぶり、葉の数枚を見ると、色づきも違えば、葉の重なり具合も違うことに気づきます。風景の中の何かをフォーカスしたり、トリミングしたりすることは、京都流に言い換えれば“ほかす(捨てる)”こと。それがより単純化されていき、工芸の意匠へとつながっていくそうです。また、自然をモデルにした文様を見て、野山の風情に思いを馳せるのも、おつなもの。この秋、紅葉に色づく京都の風景を歩きながら、その風情をじっくり味わってみて下さいね。
竹中木版 竹笹堂
京都市下京区綾小路通西洞院東入る新釜座町737
電話番号 075-353-8585
URL www.takezasa.co.jp/
2011.10.26(水)
text:Hiroko Nakano