京友禅の伝統と美しさを実感

重要無形文化財の「大束ね熨斗(のし)文様振袖」を復元した振袖。随所に施された吉祥文様から高度な染繍技術の粋が感じられる

 新年あけましておめでとうございます。皆さまいかがお過ごしですか。新年はやはり、美しいものを見て、心新たに迎えたいものですね。今回は、御所に近い、京友禅の工房「高橋徳」をご紹介します。

 有名な京都の呉服商「千總(ちそう)」の専属工房の「高橋徳」。明治32年の創業以来、世界のブランドからも注目されるほどの高度な技術を今に受け継ぐ工房です。10年以上前から、一般向けの挿し友禅の体験を行い、2年前には京友禅の和小物ショップも併設。伝統の美しさに触れられる複合施設として、全国から多くの人々が訪れています。

華やかで上品な京友禅の美しさを実感できる檜扇の小袱紗。1日体験教室で色を挿した後、印金を施して仕立て、3週間で完成品が届く

 よく、ハンカチなどにワンポイントで色を挿す体験がありますが、こちらの体験はかなり気合いを入れて取り組む本格派。職人さんたちが働く工房に机を並べて、小袱紗などの挿し友禅ができるのはちょっと珍しい環境。自分も職人さんになったような気分を味わえるのもおすすめです。

 数年前に初めて伺った時、友禅教室ご担当の高橋和久さんが「美しいものを見て、美しいと感じる心を育てたい」と話されていた言葉が今も忘れられません。その言葉をきっかけに、京都に溢れる様々な物に目を向けてみると、日常で見過ごしてしまっている「美しいもの」の多さに気づかされます。手描き友禅を体験した数週間後、印金を施して仕上げられた「檜扇」模様の小袱紗の箱を開けた時、とても華やいだ気持ちになり、「私にも美しいと感じる心があったんだ」とうれしくなりました。

五節句シリーズの一つ、「宝づくし」の体験風景。小袱紗の体験もあり、別途料金で数寄屋袋に仕立てることもできる

 日常的に便利な物はもちろん必要ですが、心から本当に美しいと思える物に出会った喜びは、自分の中の感性を呼び覚ましてくれた気がします。

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2012.01.01(日)