人々の心を惹きつける「今様」をみてみよう

 今年1月から放送中の大河ドラマ「平清盛」で、清盛の生みの母・舞子や祇園女御が口ずさむ「遊びをせんとや生まれけむ」というフレーズ。普段、あまり耳にすることがない不思議な音調のこの言葉は、「今様(いまよう)」と呼ばれています。平安時代後期に庶民の間で流行した歌謡で、後白河院も心酔したことで知られています。

下鴨神社で、「今様」が奉納される様子

 古くは、若い男性貴族たちがくだけた宴席で歌う芸能でしたが、のちに烏帽子に水干といった男性用装束を身につけた白拍子が、白拍子舞を舞うとともに、主に七五調四句から成る今様を歌うなどの芸能を披露するようになりました。神泉苑(京都市中京区)で、静御前が今様を歌ったところ、雨をもたらしたという伝説も残ります。

上:法住寺奉納(撮影:仲埜まさと) 下:嵐山もみじ祭りにて

 鎌倉時代に衰退した今様は、現在、再興を願って設立された「日本今様謌舞楽会」によって、京都の寺社仏閣での奉納をはじめ、国内外で披露されています。

 家元として長年、今様に携わられている石原さつき先生は、「今様は、七五調で綴られる美しい大和言葉のひとつ一つに合わせてゆっくりと歌い、舞う芸能です。互いにあやなす風情、歌と舞に合わせて心が動かされることが魅力ですね」。

 誰にでも通じる言葉を使って、童謡のように親しまれていた今様。古語でありながらもどこか懐かしく感じられるのは、日本人のDNAに刻まれた記憶のせいなのかもしれません。

「遊びをせんとや生まれけむ 戯(たはぶ)れせんとや生まれけむ 遊ぶ子どもの声聞けば わが身さへこそ揺るがるれ」

意味:遊びをしようとして、この世に生まれてきたのであろうか、それとも戯れをしようとして生まれてきたのであろうか、無心で遊んでいる子どもたちの声を聞いていると、自分の体までが自然と動き出すように思われる。
意訳:「新編 日本古典文学全集42 神楽歌 催馬楽梁塵秘抄 閑吟集」より

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2012.02.29(水)