世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第43回は、イタリアはパドヴァで訪ねたビストロでの感激体験について、大沢さつきさんがレポート。

凄腕天才シェフのお兄ちゃんは、名うての剛腕経営者

右が天才シェフ、マッシミリアーノ。左が経営でシェフを支える兄のラッファエーレ。

 マッシミリアーノ・アライモ40歳。18歳でミシュランの1ツ星を獲得し、4年後に2ツ星、さらに6年後の28歳で3ツ星をゲット。以来11年間3ツ星を連続キープしている天才シェフだ。“料理界のモーツァルト”の異名は「モーツァルトが頭の中で鳴る音を楽譜に書いたごとく、素材の香りをかいだだけで料理の味がイメージできる」ことから付けられた。

アライモ・ファミリー。左から、マンマのリタは菓子づくりの名手。兄のラッファエーレ。シェフの妻ローラは接客、父のアルミーニオはゴルフ場のリストランテ「ラ・モンテッキア」のマネージャーを務める。そして総料理長のマッシミリアーノ。

 家は4代続く飲食業。母はいまでも現役パティシエ。兄のラッファエーレはCEOであり、接客もこなす。典型的ファミリービジネス。厨房スタッフとも姻戚関係のあるなし取り混ぜ家族的。料理はとってもソフィスティケートされているけれど、このインティメートな雰囲気には好感がもてる。

料理本の撮影風景。テーマは“流動性”。アヴァンギャルドなヴィジュアル展開の本『Fluidità』は、シェフと兄との共著だ。

 で、このお兄ちゃんの経営手腕がなかなかスゴい。パドヴァの本店「レ・カランドレ」にインフォーマルなビストロを併設し、向かいには食材店を開業させた。ヴェネツィアには「クアドリ」の名で、リストランテ、ビストロ、カフェを開く。地元パドヴァでもモンテッキア伯爵のゴルフ場にリストランテを、そしてビストロをオープンさせた。さらにこの秋には、食にうるさいパリに出店。たいへんな勢いで、天才マッシミリアーノの味が増殖中なのだ。

2014.07.22(火)
文・撮影=大沢さつき