センセイの字が扇子にあるのは“思いを乗せる”と同じ意味

「思いがけず親しくさせていただいて。センセイの歌はぼくの青春時代そのもの。拓郎さんだけじゃなく、大滝詠一さん、松田聖子さん、テレビをつけたらセンセイのお名前が必ず出てくる、そういう時代を過ごしていましたから、ずっと憧れの人だったんです」

 店内には、吉田拓郎、忌野清志郎、泉谷しげる、奥田民生、斉藤和義といったミュージシャンとのコラボ扇子も飾ってある。さすが音楽好きの山岡さんらしいラインナップだ。そして、松本隆モデルは、扇面に松本さん直筆の歌のタイトルが入ったおしゃれなもの。「木綿のハンカチーフ」「夏なんです」「瑠璃色の地球」など、松本さん特有の味わい深い書き文字がいい。山岡さんは言う。

「扇子の起源は宮中で使われていた木の札なんですね。昔は、それに文字を書いて束ね、手紙代わりにして回していた。ですから、センセイの字が扇子にあるのは、“思いを乗せる”という意味で同じだと。普段、センセイとお話をしてると、言葉一つ一つが詩的だなと思うことがよくあるんです。たとえば、センセイはよく空を見上げるんです。そして、今日の空はこうだね、と言われる。ものすごくハッとしますね。ああ、ぼくは空を見てないな、気づいてなかったなって。センセイは人も風景も非常によく観察していらっしゃる。だからこそ、奥行きのある言葉で、詞を書くことができるんだと思うんです」

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