信仰の暮らしが息づくノスタルジックな漁村を歩く
天草下島の中南部、美しい羊角湾の入江にある崎津地区。ポルトガル人宣教師、ルイス・デ・アルメイダが布教活動を行ったこの場所は、長く天草のキリスト教布教の中心地だった。小さな漁港を中心に民家が連なるこの集落は、今でもクリスチャンが多く暮らし、信仰の暮らしが息づいている。
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崎津天主堂は、明治時代に入り禁教令が解かれた後、建立された教会。現存の建物は、昭和9年(1934年)に、フランス人のハルブ神父によって再建されたものだ。建物はゴシック様式で、内部は珍しい畳敷き。日曜朝にはミサが行われ、地元の人たちで賑わう。
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崎津天主堂の周りに広がるのは、時が止まってしまったかのような、静かな風景。家々の間に張り巡らされた、人が一人通れるほどの細い路地は「トウヤ」。海に面して家の玄関があった時代に、船を下りて自宅に帰るために使われていた道だ。家から海に張り出しているテラスは、船着き場として利用されていた「カケ」。そんな昔の面影がそのまま残る町並みは、国の重要文化的景観に選ばれている。
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﨑津に暮らす人の多くは、底引き網漁の漁師さん。代々クリスチャンという人もいて、彼らの漁船の中には、マリア像やクルス(十字架)も祀られている。もちろん、漁に出るときは祭壇に手をあわせてから出かけるのが習慣。出港と帰港時には、小さな岬に立つマリア像に、船上から祈りを捧げる。海を見守る白いマリア像は、船の道しるべとして、地元の人たちが建てたものだ。
2014.06.30(月)
文=芹澤和美