異色作に込めた切実な想い

「私自身が不妊治療を経験し、『できない側』の苦痛を、身をもって味わいました。 あのときつらかったのは、自分の思い描く『幸せ』が、『自分の力で』手に入らなかったからです。不妊治療は努力や継続でどうにかなるものではなく、運にも左右されます。 報われない悲しみ、理不尽な結果に何度も打ちのめされました。

 ですが、あるとき気づきました。 病院に通っていた女性たちはたいてい無言で俯きがちで、待合室は満員なのにいつも静かでした。でも、ここにいる人たちは皆、 自分にとっての幸せや欲しいものがちゃんとわかっていて、それをつかみ取るために必死にがんばっているんです。

 物語のなかでは、翠の妹・琳が妊娠中の姿で出てきます。彼女は幸せそうに見えますが、それは妊娠しているからではなく、彼女が『自分の夢』を叶えたから。翠が琳を眩しく見つめるのには、そういった理由もあります。

 自身の力でどうしようもないときでも、せめて進む方向を選ぶことくらいはできるし、そうであってほしい。どんなことをしていても、幸せだと感じられる生き方をしたい。そうやってつかんだ何かには、『できても、できなくても』、きっと意味がある。 そんな願いを込めたタイトルです」

 ドラマ化に際して、原作者としての心境はどうか。

「原作はもう完結していますので、私も一視聴者として、ドラマを心から楽しみにしています。誠実に真面目に、 自分に恥じないようにきちんと生きたいとがんばっている宇垣美里さん演じる翠を、早く映像で見たくてワクワクしています。宇垣さんご自身の持つ知的さと人懐っこさもプラスされて、きっと原作以上に翠というキャラクターがかわいらしくいきいきしていると思います。

 山中柔太朗さん演じる真央は、あまりにも理想的な年下男子すぎて、きっと皆さんメロメロになってしまうんじゃないでしょうか。自身の優しさのあり方について思い悩む誠実さを、とても柔らかく自然に演じてくださっていて、こんなにかわいくてかっこいい年下男子が職場にいたら、仕事にならなくて大変かもしれません(笑)」

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 この漫画の本編は、以下のリンクからお読みいただけます。

【マンガ】「不妊症?」「かわいそうに」結婚目前で彼氏に裏切られ、職場では嘲笑の的に…それでも耐え抜いた32歳女性が“どうしても我慢できなかったこと”〉へ続く