妻を「推し」として見る夫たち
一穂: 綸は基本的にまっすぐな子だから、久乃に対して「こんないいお家で育ててもらったんだから」とか「いつまでもグチグチ言っていないで、もう大人なんだから許してあげたらいいのに」とか、心のどこかで思っていそうですよね。
綿矢: たしかに、綸は義理人情を大事にするタイプなので。一方で、果遠と結珠の夫たちはいい人たちですよね。男性を安易に悪者にしないように気をつけているように感じたのですが、いかがでしょうか。
一穂: そうですね。「男が悪い」としてしまうと本来書きたかった物語とは違うものになってしまうと思ったので、DVをするような夫にはしませんでした。その結果、どちらの夫も妻を「推し」として見ているような人になってしまいましたが(笑)。
綿矢: すごく妻のことをわかってくれるし、優しくて素敵ですよね。だからこそ、支配的な男性のせいで女性同士が結びつくというような、外からの圧力による関係性ではないことがすごく伝わってきました。
一穂: 逆に、結珠と果遠にとっては周りがどんなにいい人でも、いらないものはいらない。すごく迷惑なふたりでもあるんです。
