お笑い芸人さんに、愛する地元のおいしい食べ物や仕事でよく行く場所でのおいしいものを語ってもらう不定期連載「芸人ソウルフード」がスタートします。

 第1回に登場いただくのは、天津・木村卓寛さん。兵庫県姫路市で生まれ育ってから、芸人を志して大阪へ。“エロ詩吟”でブレイク後、上京し、2021年から岩手へと拠点を移して活躍されています。

 「だんだん東へ東へと進んでいる」と言う木村さんに、地元のソウルフードや、大阪・東京で親しんだ味、食の面白さを実感している岩手のおいしい食べものなど語ってもらいました。


「これって姫路だけなんだ…」

――木村さんは兵庫、大阪、東京、岩手に居を構えてきたので食文化にも多様に触れてきたと思いますが、ご出身の兵庫県姫路市での思い出の食べ物はありますか?

 姫路市には21歳まで住んでいたんですけど、「姫路おでん」というのがあって生姜醤油でおでんを食べるんです。これ、姫路では大体の家庭がそうしてるんですけど、大阪に出て初めておでんを食べた時、お店の方に「生姜醤油ください」って言ったら「ないです」って言われて初めて、姫路独特のものやったんやと気づきました。

――生姜醤油というのは、すりおろした生姜を醤油の中に入れたものという解釈でいいですか?

 そうです。おでんの出汁は基本、関西風ですけど、各家庭によって違いますね。うちはおかんが甘い味付けが好きやったんで、甘く炊いたおでんに生姜醤油をつけて食べるんです。関西には「平天(ひらてん)」っていうのさつま揚げの薄~いやつみたいな練り物があるんですけど、おでんに入ってる平天に生姜醤油をつけてご飯をがーっと食べるのがたまらなくて。僕、きょうだいが4人いるんですけど、毎回取り合いでしたね。

 おでんっておかずになりにくいっていう人が多いでしょうけど、「姫路おでん」でガッツリとご飯はイケますし、うちのはおでんの甘さと生姜醤油の辛さでめちゃくちゃご飯が進みました。

――地元には「姫路おでん」を食べられるお店もあるんですか?

 ちらほらとあります。帰省した時にお店で食べてみたいと思って何軒か行ってみて、「姫路おでん」を食べたい時はここというところを見つけました。

 あと、デパ地下などにある「御座候」ってわかりますか? 一般的には「回転焼き」「今川焼き」って言うんでしょうけど、姫路の人間は県外に行っても「御座候」を探すんです。

 僕が住んでたのは姫路市のいっちゃん端っこで、めちゃくちゃ田舎で。コンビニもないし、信号も3個くらいのところに住んでいて、おかんが「姫路(の街)に買い物に行く」ってなったら、あと病院に行く時は必ず「御座候」を買って帰ってきてくれました。

2025.10.10(金)
文=高本亜紀