秋の岩手はとっても豊か

――これからの季節、楽しみにしている食べ物は?

 やっぱりキノコですね。「ボリ」っていうキノコがあって、一般的には「ナラタケ」ですかね? 出汁がすごく出るんです。こっちには芋の子汁っていうものがあるんですけど、「ボリ」を使えば旨みが増しておいしいですね。冬は「ひっつみ」っていうすいとんみたいなものも食べたくなります。

 あと、「ズッキーニ」が安いので、よく食べるようになりました。妻曰く、東京にも売ってたけどこんなにはなかったと。キュウリくらいの感じで売ってるので、野菜炒め的なものにも入ってますし、朝食べる食パンの上にスライスしたものを乗っけてマヨネーズとおいしいアウトドアスパイスをかけたりして食べてます。

 野菜は東京にいた時より食べるようになりましたね。あと、「じゃじゃ麺」はキットが売っていて、キュウリと生姜があれば家でもできるんで「家じゃじゃ」もするようになりました。

 今日もこの取材の前、出かけてたんですけど、帰り道にある無人の販売所に大きなトマトが100円くらいであったので、妻が買ってましたね。

――まさに地産地消ですね。

 そうですね。僕、いわて牛応援団長をやらせてもらってるんです。岩手では「いわて短角牛」っていう赤身のお肉が有名で、夏場、野山に解き放つんです。で、走り回ったり、動き回ったりして筋肉ムキムキになるから、脂肪分のない赤身のお肉ができるんです。

 いわて牛は全国で1位を獲ることもある立派なお肉で、松坂牛とか神戸牛などに肩を並べるくらい質は高いと思うんですが、知名度がまだそこまでなので、ぜひ知っていただきたいですね。

 品川であった牛肉品評会みたいなものに参加させてもらったことがあるんですけど、目利きの人がセリで落としていくんです。そんなんも勉強させてもらってます。岩手は昔から牛とか馬をすごく大事にしていて、民謡を習ってるんですけど、牛の歌や馬の歌が多いんですよね。

――民謡ですか。確かに、地元のことが歌になっているからいろいろと学べますよね。

 そうなんです。歴史が好きなんですけど、東北の歴史には疎くて。こっちに来ていろいろと知るうちに面白さを感じてハマっています。

 そうそう、牛といえば、ヨーグルト。岩手はめっちゃ種類が多くて、全部めっちゃうまいんです。スーパーに大きなパックでデンデンデン! といろんなところのヨーグルトが並んでるんですけど、トロットロでおいしくてびっくりしました。元々、ヨーグルトは食べてましたけど、こっちに来てより食べるようになりましたね。

――お話を伺っていて、岩手に引っ越されてから食生活が豊かになったように感じました。

 おっしゃる通りです。その場に行かないと食べられないものも多くて、東京に住んでいたらわからんことやったなと思いましたし、豊かってこういうことなんやなと実感する日々ですね。

――ちなみに、もし東京や大阪に仕事へ行く時のおいしいマストなお土産も教えていただきたいです。

 姫路のお土産やと「玉椿」。上品なお菓子で、よくおかんが持たせてくれていました。岩手やと「奥州ポテト」はおいしくて、最初に食べた時に衝撃を受けたのでよくお土産にしています。メジャーなところで言うと、「かもめの玉子」。いろんな人に配る時は重宝しています。

――姫路や大阪、東京に立ち寄ったら食べたいものもありますか?

 大阪やとインディアンカレーは行きたいですね。

 あと、姫路に住んでた大学生の頃、「百楽」っていう中華料理店でアルバイトしてたんです。姫路のお店はなくなってしまったんですけど、大阪の上本町にあって。アルバイト時代、まかないで一口だけ切れ端をもらっていた杏仁豆腐がほのかに甘くて冷たくて、歯応えもめちゃめちゃ好きでおいしいんです。大阪に行った時に食べに行きたいなと思いつつ、まだ行けてないんですけど、必ず行きたい思い出の店です。

 東京やったら、五反田にある「スペインバル ジローナ」さん。上品なお味でよく行ってたので、また立ち寄りたいですね。

天津・木村(てんしん・きむら)

NSC大阪校21期生。本名、木村卓寛。向清太朗(現・天津飯大郎)と1999年2月に天津を結成し、向のオタクキャラを生かした漫才で活躍する。2007年12月には「オールザッツ漫才2007」(MBS)で"エロ詩吟"のネタを披露して人気は全国区に。現在は岩手県に移住し、岩手県の情報番組「Go!Go!いわて」のMCを務め、冠番組「天津木村のへぇ~ 岩手、それ あると思います」(ともにIAT岩手朝日テレビ)も人気。
X @kimutakut

Column

芸人ソウルフード

お笑い芸人さんに、愛する地元のおいしい食べ物や仕事でよく行く場所でのおいしいものを語ってもらう不定期連載「芸人ソウルフード」。地元の有名な名物だけでなく、慣れ親しんだお菓子やアルバイトしていたお店の裏メニュー……。いつか食べてみたいソウルフードをご紹介します!

2025.10.10(金)
文=高本亜紀