ブレイクしての状況、そして“いわて応援芸人”へ

――そこから、エロ詩吟でブレイクされて東京へ拠点を移されるんですよね。
大阪に10年いて、31歳で上京するんですけど、洒落てたなぁ、東京は。
大阪やったらガテン系の感じの人がやってるお店も、東京はオシャレな人がやってる印象でした。東京はちょっとだけお金がある状態で出てきて、そこからまた貧乏になるんですけど、東京っていろんなお店がありますよね。
「串カツ田中」に出合ったのも東京で。いや、大阪で出合っとけよっていう話なんですけど、大阪時代の名残なんですかね? ああいうちょっと雑多な感じのお店に馴染みがあったのは、大阪文化を経験したからじゃないかなと思います。
僕が行くところは安い居酒屋ばかりでしたけど、先輩にはいろんなおしゃれなお店に連れていってもらいました。麻布十番とか行ってましたね。
――岩手には2021年から住まれていますが?
食べ物に関しては、今まででいちばん変わりました。岩手は山菜の種類がいっぱいあるんです。例えば春先になると道の駅とかによく売っている「シドケ」は天ぷらにして食べるんですけど、とにかく癖が強くておいしいです。あと、「ウコギ」っていう、いわゆる“生垣”も岩手では食べます。東北って昔は飢饉が多くて食べ物が少なかったから、苦しい中で見つけた先人の知恵なんだと思います。
海のものやと「ホヤ」は名前だけ聞いたことがありましたけど、岩手に来て初めて食べました。最初はシロナガスクジラになった気分というか、海の味そのままなんでウッとなるんですけど、足が速いので臭いものを食べてるから苦手になるだけで、沿岸で新鮮なものを食べるとハマりますよ。で、ホヤを食べたあと、日本酒とかビールを飲むと口の中に甘さが出て、旨さが倍増するので、酒飲みはよりハマるんですよね。

麺やと「じゃじゃ麺」。ジャージャー麺とは別物で、温かいうどんみたいな麺の上に肉味噌が乗っているんですけど、おいしいです。岩手では初めて出合う食べ物がたくさんありました。
――自然のおいしいものも多くて、いいですね。
岩手の人は自分たちのことをアピール下手って言うんですけど、言い換えると秘密保持能力が高いということ。情報が漏れなかったから、“食の桃源郷”は守られているのかなとも思ってます。
あと、「瓶ウニ」っていう牛乳瓶にウニを入れてあるものがあるんです。東京で食べた似てるものにはミョウバンが入ってたんですけど、それには入ってなくて新鮮な海水に浸かってるんです。

その海水を捨てて、ご飯にどぼどぼとかけて食べたら、めちゃくちゃおいしい。時期によって値段は違うんですけど、年1回、自分へのご褒美として食べてますね。

2025.10.10(金)
文=高本亜紀