アニメ『オッドタクシー』の脚本家・此元和津也さんが手がける話題の新ドラマ『シナントロープ』に出演する水上恒司さん。直感と冷静さを行き来しながら役と向き合う姿勢や、現場に集まった同世代の俳優の素顔についてたっぷり語ってくれました。


このドラマが面白くなかったら俳優のせい!?

――本作『シナントロープ』は、カルチャー好きのあいだを超えて、大きな反響を呼んだアニメ『オッドタクシー』を手掛けた此元和津也さんが原作・脚本を担当しています。この物語を読んでまず何を感じましたか?

 まず、こんなしゃれのきいた脚本、なかなかないな、と。そしてすでに(取材時)最終話まで脚本が完成していることに、制作側の並々ならぬ気合いの入りようを感じてます。ドラマではあまりない作り方なんじゃないでしょうか。結末の流れを逆算しながら演技を組み立てられるので、とてもありがたいです。

 完成度の高い脚本と、伏線が広がっている物語が用意されているので、このドラマが面白くなかったとしたらそれはもう俳優部のせいかも……とプレッシャーを感じています。「お前らできるのか?」って試されているような気持ちに。共演者の山田杏奈ちゃんにそれを伝えたら、困った顔をしていましたが(笑)。

――リアルな会話劇も本作の魅力のひとつになっています。リアルさを追求するために、アドリブを入れることもありますか?

 こんなことを言うと生意気に聞こえるかもしれませんが、脚本自体がとても完成されているので、アドリブはほとんど加えていないんです。

 それに脚本のセリフを自分の言いやすいように変えていく、というのはあまりやりたくない。それをやるのはもちろんラクだし、自分に近づいていくのでよりリアルにはなるのかもしれないですが、自分=水上恒司役を演じているわけではないので、与えられたセリフを忠実に発して、役を演じたい。今、俳優としてまだまだ勉強中で、勝負どころを迎えていると感じているので、脚本には誠実に向き合いたいと思っています。

 以前はどんなセリフであっても、相手に届かないと意味がないから、ぼそぼそと話してはいけないと思っていたんです。でも今回は役柄に合わせて自分の近くにぼそっと落とすように話しています。これが成り立つのであれば、またひとつ僕の中で芝居の仕方が増えていきますし、演技の選択肢が広がっていくのは嬉しいですね。

2025.10.06(月)
文=高田真莉絵
撮影=佐藤 亘
ヘアメイク=中村みつき
スタイリスト=藤長翔平