この記事の連載

 90年代にブームが始まってから約30年。食材や調理にこだわり抜いたグルメバーガーは、今やプチ贅沢グルメの一角としての地位を獲得した印象があります。

 そんなグルメバーガーですが、近年は提供する“アメリカンダイナー”の内装や醸し出す雰囲気にも注目が集まり、InstagramなどのSNSで15万件以上のユーザーが「#アメリカンダイナー」で投稿しているそうです。

 特集「ダイナーでハンバーガー」の第6弾となる今回は、神保町の路地裏に現れたN.Y.スタイルのモダンなお店、「folk burgers&beers」を訪問しました。


クラフトビールの街、米・サンディエゴで見つけた“理想の店の姿”

 都営三田線神保町駅から徒歩約2分。大通りから少し離れた路地裏に静かに佇んでいるのが、食べログハンバーガー百名店を2022年、2024年の2回受賞した経歴を持つ名店「folk burgers&beers」です。

 2018年の8月に創業して今7年目を迎えた同店ですが、オーナーの高野和彦さんはグルメバーガーの名店「ファイアーハウス」で勤務していた経験を持つ実力派。念願だった自身のお店を持つまでには、いったどんな物語があったのでしょう。

「元々グルメバーガーのお店を開きという強い想いがあり、ブームの火付け役である『ファイアーハウス』さんに弟子入りし、バーガーを作るための下地を学ばせていただきました。退職後にも日本橋の小伝馬町駅にあるバーガー屋『jack37burger』さんなど複数のお店でお手伝いをしつつ、自分なりのバーガーやお店のビジョンを固めていきましたね」(高野さん、以下同)

 しかし、自分のお店を作るうえで一番大きな転機となったのは「ファイアーハウス」退職後に訪れたアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴでの出会いだったそうです。

「サンディエゴはクラフトビールの産地としても有名なのですが、現地のハンバーガー屋に入った時に、どこのお店もメニューの半分くらいがクラフトビールで埋め尽くされていて、“ビールとセット”というのが前提だったのです。これに目からウロコが落ち、目指すお店のビジョンが固まりました。帰国後はよりビールの知識を増やすために1年ほどビールバーで修行も行い、2018年についに『folk burgers&beers』をオープンさせました」

 内装や設備にも高野さんの想いがあふれていました。

「N.Y.ブルックリンのレンガ張りのモダンなスタイルを目指したのですが、雰囲気が重くなりすぎるのも避けたかったので、アメリカの小学校で実際に使っていた体育館の床材を壁に貼り付け、ライトさも出しました。あとは、キッチンにもこだわっています。一見すると業務用の冷蔵庫に見えますが、扉に注ぎ口があるように実はクラフトビールサーバーに改造してあるんですよ」

2025.10.04(土)
文=むくろ幽介
写真=志水 隆