この記事の連載

 ハンバーガーといえば、マクドナルドなどの有名チェーン店に代表されるファストフードの代名詞ですが、それらとは異なり、じっくりと本格的な味わいを楽しむのが“グルメバーガー”です。豪華な食材を使ったこれらの高級志向バーガーは、1996年にブームとなって以来30年近く愛され続けており、一過性のブームを超えた人気を獲得してきました。

 近年はInstagramなどのSNSを中心に「#グルメバーガー」で29万件以上も投稿されており、日本にいながらアメリカンな風情を楽しめる凝った内装と豪華なバーガーが写真映えすると、20代~30代を中心にかなりの盛り上がりを見せています。

 そこで今回は、「グルメバーガー御三家」の一角として熱狂的なファンも多い東京都、人形町の老舗「ブラザーズ」を訪問。長年愛され続けるバーガーの魅力や、創業者の想いを聞きました。


就職難からのグルメバーガー出店決意! 創業者が込めた諦めない心

 東京メトロ人形町駅から徒歩約4分。働くサラリーマンたちを癒す居酒屋が立ち並ぶエリアで、真っ赤な外観がひときわ目を惹くのが「ブラザーズ BROZERS'人形町本店」です。

 アメリカンダイナー的なレトロでポップな雰囲気と、ヨーロッパのケーキ屋のような落ち着いたテイストが融合した外観は、訪問時に外国人のお客さんが数名いたこともあって、ここが日本であることを一瞬忘れてしまいました。

 今回取材に答えていただいたのは、同グループでスーパーバイザーを務めている山田晃大さん。人形町本店に加えて合計5店舗を運営している創業者・北浦明雄さんの想いを詳しく解説してくださいました。

 「創業者の北浦は、大学卒業後の進路で悩んでいたとき、一念発起してオーストラリアのシドニーに渡り、1年間現地のハンバーガー店で修業を重ねました。そして、日本に戻り25歳のときに『ブラザーズ BROZERS'』を開業しました。(山田晃大さん、以下同)

 今でこそ食べログの「グルメバーガー百名店」にも選出されるなど、グルメバーガー界の金字塔と評される同店ですが、創業当時は苦戦を強いられていたのだとか。

「開業から5年くらいは厳しい経営が続きましたが、一人一人のお客さんを大事にしながら、最高の品質と思いを込めたハンバーガーを提供する事を心がけました。そのお陰で徐々に口コミが広がり、TV取材を経て一気に客足が増えました。当時はハンバーガーと言ったらファストフードばかり。グルメバーガーを扱う店も『ファイヤーハウス』さんや『FUNGO』さんくらいだったので、『いったいなんの店だ?』と思われていたのかもしれませんね」

 こうした苦境にもめげなかった背景には、創業者の北浦さんが店名に込めた精神がありました。

「北浦は創業当時、兄弟で店を始めたという経緯もあって店名を『ブラザーズ BROZERS'』としたのですが、スペルをあえてBROTHERSではなく、BROZERS'としました。これは、アルファベットの最後の文字『Z』に最後までやり通すという気持ちを込めたからで、まさにこの精神があったから踏ん張れたのだと思います」

2025.03.27(木)
文=むくろ幽介
写真=志水 隆