この記事の連載
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McLean-OLDFASHIONED DINER【蔵前】

こだわりのインテリアによって演出された非日常感のある店内でゆったりと味わうアメリカンダイナーのグルメバーガー。写真映えするメニューなどと相まってこれらのお店はInstagramを中心に近年話題を集めており、手軽さが優先されるファストフードとは違った魅力を放っています。
特集「ダイナーでハンバーガー」の第4弾となる今回は、リノベーションされた古い倉庫やビルを中心に多くのクリエイターが集い、近年は“東京のブルックリン”などとも呼ばれている東京・蔵前にある人気店、「McLean - OLDFASHIONED DINER」を訪問しました。
アパレル業界からグルメバーガーの道へ…蔵前ブームの人気を掴んだ創業ヒストリー

都営浅草線の蔵前駅から徒歩約2分。蔵前独特のゆったりした空気のおかげか、駅近であるにも関わらず静かで落ち着いた雰囲気を漂わせているのが今年で創業9年目という人気店「McLean - OLDFASHIONED DINER」です。
お話を伺ったのは、蔵前の人に愛され続け、食べログのハンバーガー百名店に2018年、2019年、2021年、2024年と合計4回も選ばれている名店の仕掛け人・落合浩平さん。しかし、その過去は意外なものでした。
「開業前はアパレル業界で働いていて、あるときファッション雑誌の撮影でとあるバーガーショップにお邪魔し、そこで食べたバーガーに衝撃を受けました。将来的には自分のお店を持ちたい願望はあったのですが、この出会いでそれが“バーガー屋”に変わりましたね。その後はアパレル業界から離れて、全国に5店舗を展開している『Burger Mania』の広尾店にアルバイトで入店し、店長になりました」(落合さん、以下同)

修業を重ねた後に開業したという同店ですが、実はここは1店舗目ではないそうです。
「最初は『McLean-OLD BURGER STAND-』という、ここから徒歩5分以内にある2階建てのバーガーショップでした。お店の雰囲気はダイナーに多い50年代よりももっと前、ハンバーガーの歴史の始まりとされている立ち食いスタンドスタイルが多かった時代をベースにしています。こうした立ち食いスタイルはファストフードの台頭と共に廃れるのですが、店名に“OLD”と入れたように、こうした源流を大切にしたいと思ったのです」
この1店舗目には、自家製クラフトビールの専門店「McLean KIOSK -Beer Bar & Soda Fountain-」も併設されているそうですが、このスタイルには物件の持つある特徴が関係しており、それが2店舗目を出すきっかけにもなったのだとか。

「1店舗目の物件が5階建ての建物を丸々借りるという契約なんですよ(笑)。数年前までは、物件探しの競合相手でもあった『LEAVES COFFEE APARTMENT』というコーヒースタンドさんと物件をシェアしていました。このように費用対効果の関係で不安もあったスタートでしたが、幸いにも創業と同時にサンフランシスコ発祥の人気チョコレート専門店『ダンデライオン』さんも近隣にオープンし、蔵前がおしゃれな街として注目されるようになりました。その影響で来客が増え、数年後にビジネス的により効率の良いお店を出してみようと決断するに至ったのです」

2店舗目は、まるで本場ニューヨークのような雰囲気に満ちているのも印象的です。
「元々はサンドイッチ専門店にするつもりでしたが、物件の空気感を考えるとニューヨークの屋台飯であるチキンオーバーライスなども出せるダイナーにする方が合うなと思ったのです。店内も広いので、アパレル時代のスキルを活かして作ったTシャツなどのグッズも販売しています。お店に来た時の思い出にして欲しいのと同時に、『なにそのTシャツ?』と買った人たちの間で口コミも広まって欲しいですね」
2025.06.13(金)
文=むくろ幽介
写真=志水 隆