コンシェルジュ野村さんの別の顔とは

――最後に、お二人の経歴についてもお聞きしていいですか。書店員さんって個性的な方が多い印象です。
野村 私は大学在学中に唐十郎さんの「劇団唐組」に入り、在団4年の間に役者と演出助手をやっていました。その後、自分で演劇ユニット「ビニヰルテアタア」を旗揚げ主宰・脚本・演出・役者を兼務していましたが、コロナ禍もあって、いまはちょっとお休み中です。
――イベント時にノリノリで“貞子”になっていた理由がわかりました。劇場には霊現象がつきものだと言われますが、実際のところは?
野村 もちろんあります。愛知県の古い商家で公演をした際に出た幽霊は、写真としても残っていますし、4人の女優たちを主人公にした「楽屋」という作品には、死人が登場するせいか、霊的なものを呼びやすいみたいです。もはや珍しくもないというか。私は小さい頃からちょっと“視える”ほうなので。いまはそうでもないんですけど。
――もともと怪談とは浅からぬ縁があったのですね。その後、どういった経緯で「代官山 蔦屋書店」に?
野村 劇団唐組を退団したあと、ドイツ留学を経て帰国した2011年に「代官山 蔦屋書店」がオープンするという話を聞き、オープニングスタッフとして雇っていただいて。それから現在まで細々と……お局として在籍しています。最初はカウンター業務をやっていたのですが、途中から好きなジャンルを活かしてコンシェルジュになりました。
「代官山 蔦屋書店」にはもともとサブカルの棚がなかったのですが、私がその分野に強いということで5、6年前にサブカルの棚ができ、「サブカル市」などのイベントも実施させてもらえるようになりました。アンダーグラウンド、エロなども私の担当ジャンルです。

――あのオシャレな書店にサブカル棚ができたのは、野村さんの力だったんですね。
野村 上の人が自由にやらせてくれたおかげです!
――では、他のお仕事もやりながら。
野村 メインは蔦屋書店ですが、ほかにライター業や演劇ワークショップのファシリテーター、テレビ番組の制作会社のリサーチャー、週1でスナックのママもやってます。性癖としては緊縛が好きなので、その作品撮りをしたり、女体書道のモデルをやったことも。
自分自身がこういう人間なので、私のサブカルチャー棚のコンセプトは「どこにも当てはまらない、荒くれ者たちを受け入れる土台となる」です。
2025.10.09(木)
文=伊藤由起
写真=志水 隆