この記事の連載
蔦夜書店~怪異な夜~【前篇】
怪異な夜【後篇】
夜明け前、異様なテンションのトークショー

さて、時計は午前4時近く。観客はふたたび再びイベントスペースに集合し、トークショー第2部が始まりました。今回の登壇は、田中俊行さんに加え、深津さくらさん、はおまりこさんの3人。メンバーが替わったことで場の空気もがらりと変わります。
田中さんの飄々とした語り口は健在で、さらりと放たれるひと言に会場が一瞬ヒヤリ。そこに深津さんの、じわじわと追い詰めるようなストーリーテリングが重なり、観客は息を飲んで耳を傾けます。はおさんは淡々とした口調ながら、内容の生々しさでゾッとさせる。三者三様のスタイルが交互に繰り出され、空気が緩んではまた張り詰めるの繰り返しが、徹夜の眠気を吹き飛ばします。


最後の怪談は、田中さんが代表作「あべこべ」を披露。もはや古典落語の趣で、何度聞いても味わい深く、サゲ(オチ)も見事のひと言。自ずと拍手が起こり、今夜のフィナーレへと向かいます。

今夜の出演者全員が一堂に会すと、観客席からは安堵と興奮が入り混じった拍手がふたたび。響外の空は完全に白み、夜通しの非日常体験がようやく日常へとつながっていく。そんな“帰還”の感覚に包まれながら、会場を後にしたのでした。
夜通し書店内で過ごすイベントはこの冬も行われる予定。内容は未定ですが、ぜひチェックしてみてくださいね。
後篇では、本企画の仕掛け人である「代官山 蔦屋書店」の販促企画担当・稲中惇弥さんと、“もう一人”のインタビューをお届けします!

》【後篇】誰もいないはずの2号館にBGMが…じつは怪異が起こっていた!? 【蔦夜書店~怪異な夜~】の舞台裏インタビュー
代官山 蔦屋書店
所在地 東京都渋谷区猿楽町17-5
電話番号 03-3770-2525
営業時間 フロアにより異なる。詳しくはウェブサイトへ
https://store.tsite.jp/daikanyama/

2025.10.09(木)
文=伊藤由起
写真=志水 隆