この記事の連載
蔦夜書店~怪異な夜~【前篇】
怪異な夜【後篇】

とある夏の深夜、閉店後の「代官山 蔦屋書店」で秘密めいたイベントが開催されました。その名も「蔦夜書店 ~怪異な夜~」。
オカルトコレクター・田中俊行さんをはじめ、怪談師として活躍するチビルマさん、はおまりこさん、深津さくらさん、夜馬裕さんという豪華メンバーが夜通し怖い話を繰り広げるという、世にも奇妙な企画です。ちゃっかり潜入したCREA怪談部(仮)が、その全容をレポートします。
縁起でもない文章に囲まれた会場で

週末のにぎわいもウソのように静まり返った、真夜中。「蔦夜書店」の扉が音もなく開きました。吸い込まれるように入っていくのは、抽選で選ばれた約70人の怪談ファン。24時開店の翌6時閉店というド深夜のイベントにも関わらず、参加者は女性が多めな印象です。
会場は、旧山手通りに面した3号館2階「SHARE LOUNGE(シェアラウンジ)」のイベントスペース。ステージまわりには、黒の短冊が無数に貼りめぐらされています。見るとそれは、5人の出演者の著書から抜粋したらしい、禍々しいフレーズばかり。

参加者は、シェアラウンジで提供される各種ドリンクを自由楽しみつつ、座り心地の良いチェアやソファ席でくつろぎながら怪談を楽しめるとのこと。こんなにおしゃれでラグジュアリーな怪談イベント、いまだかつてあったでしょうか。


24時。いよいよイベントの始まりです。まずは、黒衣に身を包んだ同店の企画担当・稲中淳弥さんが“開店のご挨拶”。その横に不気味な女性がずっと立っていたのですが、何の説明もなく……。会場のザワつきが止まらない、不穏な幕開けとなりました。


2025.10.09(木)
文=伊藤由起
写真=志水 隆