「失恋といじめ」「盗撮と隠し撮り」…現代の難問の数々

 このドラマは、「制服のジェンダー」や「失恋といじめ」、「盗撮と隠し撮り」、「個人情報流出」といった、学校だけでなく現代社会にも通じる重要なテーマを扱ってきました。でも、どんなに法律の知識を駆使しても、法律の定義だけでは解決できない、感情のもつれもある。単純に「加害者」と「被害者」に分けられない現実があることを、このドラマはちゃんと示してくれているんです。

 そんな中で、健治がいつも大切にしているのは、「生徒の最善の利益」を考えること。「その子にとって一番良いことって何だろう?」と、その子自身に寄り添いながら、言葉を尽くしていくのです。

 第一話、生徒や教師たちとの出会いで学校の良さも知った健治は祖母・可乃子(木野花)にこう語ります。

「ザワザワの色もガッカリなままで、僕は何もわかってないし、何も解決せず、何も変わらなかった。なのに美しかったんだ。あんなところには、もう二度と降り立ちたくないと思ってた。でも、僕はまだその星のことを何も知らないのかもしれない。初めて思ったんだ。何かこう……綺麗なものも隠されているのかもしれないって。それが何かは全然わかんない。でも……もう少し探してみるよ。見たことのない色を」

 なんと詩的で美しい言葉……。まるで『銀河鉄道の夜』で「ほんとうのさいわい」を探し求めるジョバンニのようです。健治は追い求めているのは、それぞれの人にとっての「ほんとうのさいわい」なのかもしれません。

 本作は生徒の個人的な問題だけでなく、教師の過酷な労働環境や、難しい学校運営の問題など、たくさんの視点から物語を描いています。そして、現在進行形で世界で起きている戦争のことも。全部、同じ宇宙の中で起きていることなんですよね。

 こんな無秩序な世界で、生徒、先生、学校……それぞれにとっての「ほんとうのさいわい」なんて、見つかるんだろうか。そう思ってしまう私たちに、このドラマは「諦めないで」と、そっと勇気を与えてくれるはずです。

 『銀河鉄道の夜』にはこうも記されています。

「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」

 正しい道を進んでいれば、幸せにはたどり着ける。そう信じたくなります。

 ただ、最大の謎も残っています。それはタイトルである『僕達はまだその星の校則を知らない』です。この星の校則とは、すなわち、この社会で生きる規則やルールのこと。私たちがこの社会で生きる上で守るべき「正しい道」とは何を指しているのか。そして、それを「まだ知らない」とはどういうことなのか。何かしらの答えがあるのかにも注目です。いよいよ最終回。想像力を働かせながら、この物語の結末を見届けたいと思います。

僕達はまだその星の校則を知らない(関西テレビ)

最終回 2025年9月22日(月)よる10時~放送

2025.09.22(月)
文=綿貫大介