トラウマを抱える難役をモノに…磯村勇斗の繊細な演技
俳優陣の演技も、本当に素晴らしいんです。健治は、自分だけの世界を大切にしている人物ですが、その「つかみどころのない」部分を、磯村勇斗さんが繊細な演技で見事に表現しています。過去のトラウマを抱え、学校が苦手という役どころを演じるのに加え、法律、星、という2つの軸をバランス良く見せている。キャラ設定が渋滞しそうな難役なのに、こんなに自然に見えるのは、まさに彼の演技力のおかげだといえます。
健治のそばに寄り添ってくれる教師・珠々を演じるのは、堀田真由さん。彼女が演じるキャラクターは、どこか身近にいるような、飾らない等身大の存在感がある。そんな彼女の存在が、私たち視聴者の共感を呼び、物語にグッと引き込んでくれます。健治にとって、学校で唯一心を開ける存在である彼女の演技が、学校というコミュニティの温かさを感じさせてくれるのです。

理事長の尾𥔎役の稲垣吾郎さんは、品のある佇まいの中に、どこか謎めいた妖しさやユーモラスな一面をのぞかせる役。派手なセリフや感情の起伏が少ないキャラクターなのに、その言葉や眼差しには不思議な説得力があります。健治とは敵対する役どころだけど、実は彼の演技が、作品全体の「静かな共感」という雰囲気を醸成する上で、大きな役割を果たしているといっても過言ではありません。

そして目を見張るのは、学園ドラマの要である生徒役の俳優陣。生徒会長の鷹野を演じるのは日高由起刀さん。モデル出身で、演技初挑戦ながら昨年公開の映画『HAPPYEND』でW主演を獲得したという逸材です。朝ドラ「あんぱん」への出演に続き、「ばけばけ」への出演も決まったことも話題になりました。誠実な役が本当に似合います。
生徒会副会長の斎藤瑞穂を演じる南琴奈さんは、芯の強さが魅力。来月公開の映画『ミーツ・ザ・ワールド』では、杉咲花さんが最終オーディションで評価したことが決め手となり、希死念慮を抱えたキャバ嬢という新たな役に挑戦していて、その振り幅には驚かされます。
生徒会・議長団議長の北原かえでを演じるのは、中野有紗さん。この夏の映画『この夏の星をみる』でも好演していて、本作では一見クールだけど、実は家庭に複雑な問題を抱えている役どころを演じています。
これからブレイクするであろう、まさに「青田買い」必須な俳優陣ばかりが揃っているあたりにも、学園ドラマとしての「新しさ」を狙っているのがわかります。もちろん演技面も文句なし。とにかく、どこを見ても抜かりのない布陣で制作されているんです!
もちろん、大森美香さんの脚本も光っています。第一話で、生徒たちが校則について模擬裁判を行っていたけれど、最終回では、学校運営の理不尽な対応に対して、今度は教師による本当の裁判が行われます。まるで天体の自転や公転のように、見事に一周する美しい構成には、ただただ惚れ惚れしてしまいます。
2025.09.22(月)
文=綿貫大介