閉塞感や孤独を感じた経験を持つ現代の人々にとって、広大な宇宙や科学の力で未知の世界を切り拓く物語は、困難な状況を乗り越える勇気や、未来への希望を象徴するものとして響くのかもしれません。
「一生分の青春を感じた」“感動回”だった夏合宿エピソード
このドラマでも、天文部の活動を通して、宇宙の壮大な話がたびたび出てきます。部員集めや学園祭など、お決まりの展開も出てくる中で、特に胸を打つのが5話の夏合宿エピソード。健治の家に天文部の生徒たちが集まり、深夜の天体観測を行います。
静かな草原に寝転がって、それぞれのタイミングで望遠鏡を覗いたり、願い事をしたり。美しい星空をみんなで共有しながら会話する、あの時間の愛おしさといったら……。ほっこりを通り越して、もう感動レベル。
夏って毎年やってくるけれど、彼らを通して見ると「この夏は一度きりなんだ」って、改めて気付かされるんです。だって、この夏と同じ星空は二度と見られない。まして、高校生活という短い期間で考えたら、なおさらです。
夏合宿後、高瀬(のせりん)が「本当、冗談抜きで一生分の青春を感じた」と健治にお礼を言うシーンは、「わかるよ……」の一言に尽きます。一瞬が永遠に感じるように、一夜が一生の宝物になることだってある。それこそが青春の真理なんですよね。

ちなみに、夏合宿での生徒たちの会話は、どれも心に残るものばかりでした。なかでも、江見(月島琉衣)が夜空を見ながら眠気覚ましに語った、自作のSF小説の話は本当にすごかった。「X年後の、徴兵制のある日本の未来」という設定が、もしかしたら遠い未来の話じゃないかもしれないと思わせて、ゾッとさせられます。
この話の流れで、さらっと健治が「もうすぐ終戦記念日」だと語るのも、本作から何かを感じ取ってほしいという制作陣の熱い想いが伝わってきます。過去と、今と、未来のために、星に何かしらを祈りたくなります。
SFやファンタジーって、現実とは違う社会を描いているからこそ、私たちが当たり前だと思っていることを、改めて見つめ直すきっかけをくれますよね。そうやって、物語は私たちの視野を広げ、物事をいろんな角度から見る力を育ててくれる。もちろんドラマだって、私たちの心や考え方、そして人間性そのものに深く語りかけ、現実をより豊かにする力を持っているんです。
2025.09.22(月)
文=綿貫大介