一泊二日の大冒険、大人の輪郭はまだぼやーっと見えたばかり

2日目。
天気はあいにくの曇り。昼から雨が降るのもあってか少しむしっとしていた。
8時半から朝食の予定だったのでそれまでに着替えを済ます。朝食会場に案内されるとずらりと朝食が並んでいた。海鮮汁にはカニ、ホタテ、魚が入っていて出汁が身体に染み渡った。何よりお米がおいしかった。一合ぐらい食べてしまった。

朝食を食べ終わりそそくさと宿を後にした。月岡温泉から新発田駅までシャトルバス500円。バスには海外の観光客から家族連れなど様々な客層の人たちが乗っていた。
今回新潟駅の近くに泊まるか、少し離れたところに泊まるか迷ったのだが、間違いなく後者で良かった。正解だったと思う。車窓から一面に広がる田んぼと広い空が見えるが、それらが新潟そのものを表しているような気がした。また、電車に乗ったり、田んぼ道を歩いたりしてその土地の生活が垣間見えるとうれしい。得をした気持ちになる。それにしても田んぼしかなかった。田んぼ以外の畑はあまりお目にかかることはなかったと言っていいのではないだろうか。この夏は雨が全然降らなかったそうで、雨予報は米農家にとってとてもうれしいことなんだよと昨日のお寿司屋さんの常連さんが言っていた。それを聞くと、降っていた雨も愛おしく思えた。
新潟駅に着いて笹団子のお店を二つ周ったが売り切れで不発に終わった。悲しい。おじいちゃん、おばあちゃんが営んでいるお団子屋さんの雰囲気が素敵で、ここで笹団子をゲットしたかった、、、と悔いが残った。(事前リサーチ不足)笹団子不発により心と若干の足の疲労を感じたので、カフェでお茶することに。ちなみにリュックは駅のロッカーに置いて身軽で街歩き。これはめちゃめちゃ正解だった。


「dAb COFFEE STORE」というカフェへ。店内はアットホームながらもおしゃれな雰囲気。ホットのカフェラテと桃がごろっと乗った夏限定パンナコッタを注文。店内はレコードがかかっていて、販売もしていた。新潟にもこんなに素敵な雰囲気のカフェがあるのかと驚いた。

今代司酒蔵の酒蔵見学を14時から予約していたため、カフェを後にして酒蔵へと向かう。道中観光客らしき人は見当たらないし、地元の人も見なかった。しかし酒蔵に入ると観光客で賑わっていて驚いた。今代司酒蔵は250年前に創業し、元々は旅館だったそう。89の酒蔵が新潟にあるそうだが、木桶で作った日本酒があるのは今代司だけ。木桶で作ると温度管理が難しく、酵母菌が伸び伸び育つために味に丸みがでて、さらに杉の匂いもほんのりするらしい。初めて見る酒蔵はその空気感から神聖に感じた。見学が終わり、甘酒2種類と日本酒をテイスティングできて、そこで飲んだ「もと」と言う甘酒が美味しくて、「もと」と、日本酒をお土産に購入。


今代司酒蔵から沼垂商店街テラスまですぐだったので少し寄ってみることに。しかし、お盆休みに入ってしまっているお店がほとんどだった。悲しい。朝市などをやっているそうで、素敵なうつわ屋さんもあったので機会があったら絶対に立ち寄りたいと思った。
そんなこんなしているうちに新幹線の時間が近づいてきた。しかし、私はまたもや寿司が食べたくなっていた。そこで少し早いが夜ご飯に「佐渡弁慶廻転寿司」へ。昨日食べれなかったネタを食べなければ帰れないと思い、のどぐろ、生ウニ、ぶり、エビの味噌汁をたのんだ。のどぐろはやはり格別だった。脂がしっかりとのっていて、ほんのりと炙ってあって塩味も感じる。これが最高のひとときってやつだ! と興奮した。
お腹もこころも満腹になったところで駅へと向かい、マネージャーさんとCREA編集部の方へのお土産を探す。新潟出身の友達に聞いたサラダホープをマネージャーさんと自分用に購入。帰って食べるのが楽しみだ。お土産を買って安心したのかそのまま改札に入ろうとした。しかし、荷物をロッカーに預けていたことをふと思い出しすぐさま戻った。慣れない一人旅、油断は禁物ということを学んだ。そして無事に家に帰るまでが旅だということも。
一泊二日の旅だったが、私の中では大冒険だった。全く知らない土地で一人で旅をしていると、子どもの時一人で東京に来た時のことを思い出した。あの時私は少し大人になった気持ちで東京を歩いていた。でも今回はあの時とは違う意味で大人になった気持ちを味わえた気がする。ただその大人の輪郭はまだぼやーっとしていて、まだまだこれからだと思わされた。さて、次はどこへ旅をしようか。


川床明日香(かわとこ・あすか)
2002年7月10日、福岡県出身。’14年、第18回二コラモデルオーディションにてグランプリを受賞。'19年3月まで二コラモデルとして活躍。同年には『ピア~まちをつなぐもの』に出演するなど、女優としても活動の幅を広げる。'24年の連続テレビ小説「虎に翼」では、主人公・寅子の娘である佐田優未役を好演。'26年公開予定の映画『うるさいこの音の全部』にて主演を務めることが先日発表された。

2025.10.04(土)
文・写真=川床明日香