偉大すぎる父を持って
――誰もが知る天才絵師・葛飾北斎を父親に持つというのは、娘としてどのような気持ちだったと思われますか?
長澤 偉大すぎる父を持ったことについて、応為が萎縮していたとは思えません。自分自身も絵師だった応為は、目の前で絵を描いている北斎の姿に、自分も負けまいと必死で食らいついていたのではないかと思います。父の名声や存在の大きさに物怖じするような女性ではなかったのではないかと感じました。
――応為にとって北斎はどんな存在だったと想像されますか?
長澤 誇りだったと思いますし、背中を追い続ける憧れと尊敬の対象だったと思います。父と娘というよりは、固い絆で結ばれた師弟関係という意識が大きかったかもしれません。
そもそも、父と娘の間には、母と娘とは違う親子関係があるように思います。異性というのもあるのかもしれませんが、心の隙間を埋めるというか、お互いに癒やされる存在なのかもしれないと思います。
応為と北斎は確執があったと思う方もいるかもしれませんが、私は本音を言い合える心許せる存在で、お互いにほっとする関係性でもあったのではないかとみています。










