先日『不機嫌ばかりな私たち』を出版された渡辺満里奈さん。50代で迎えた閉経や更年期によるからだと心の変調、それに伴う母親業の変化について、日々の生活とともにありのままを伝える筆致は多くの読者から共感を得ています。

 性について語りづらいとされる属性である元アイドルの渡辺さんは、なぜこうした発信を続けるのでしょうか。ひとりの50代女性を通じて見た、「閉経のリアル」について伺いました。


「閉経=上がり」という風潮に抗いたいから

――更年期や閉経についてお話されるようになったきっかけは?

渡辺 同じ事務所の野宮真貴さん、松本孝美さんと『大人の女史会』という、50代からの人生を健康に楽しく過ごすための情報発信をしているんですけど、おふたりは更年期について明るくあっけらかんとお話しされるんですよ。それまで更年期って不安で怖いものというイメージがあったんですけど、おふたりからすごく勇気をもらえたんですね。これから更年期を迎える方たち、今真っ只中にいる方たちもそういう情報を求めているんじゃないかって。

 でもよく言われます、アイドルだった満里奈ちゃんが赤裸々に語るんですね、とか。でも自然なことなので。私にとってはピラティスで体調がよくなりましたっていうのと違いはないんですよ。自分のからだの変化という点では。

――それくらい更年期や閉経のイメージってマイナスなものだったのかもしれません。

渡辺 わからなくもないんです。女優さんならそういうことは話さないだろうなとは思うし。私だってわざわざ「私閉経しました!」とは言わないです。以前友達が泊まりに来た時に「ごめん、急に生理になっちゃったからナプキン貸してくれる?」って言われて「私もう閉経しちゃってるからな~」って何気なく話したらその友達がすごく気まずそうにしていて。その時に「気軽に閉経のことを話すとかえって気を使わせちゃうのかな」って思いました。

 ただ、世の中の「閉経=上がり」っていう言い方はすごく嫌だったんですよ。そんな、双六みたいにね。そこで「女性じゃなくなるの?」みたいに不安になる人もいるでしょうし、私としてはちょっと抵抗の意味も含めて情報を発信してもいいかなと思いました。

2025.09.21(日)
文=西澤千央
写真=佐藤 亘

CREA 2025年秋号
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この記事の掲載号

「誰にも聞けない、からだと性の話。」

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「誰にも聞けない、からだと性の話。」

定価980円