編集部注目の書き手による単発エッセイ連載「DIARIES」。今回はコラムニストの月岡ツキさん。30代女性を中心に大きな共感を集めたエッセイ集『産む気もないのに生理かよ!』で「産む産まない問題」について綴った月岡さんが選んでくださったテーマは、一体何のためにあるのかわからないけれど、私たちの身体に張り付いている「脂肪と乳腺の塊」について。

 残暑である。何が暑いって、ブラジャーが暑い。

 エアコンの効いた部屋の床に寝そべり、YouTubeショート動画を眺め続けてはや2時間。そろそろ小腹も空いたしコンビニにアイスでも買いにゆくか、とノッソリ立ち上がったところで、朝パジャマからダル着に着替えたときにブラジャーをつけていなかったことに気づいた。床に寝そべってYouTubeショート動画を見るぶんには、ブラジャーは必要ない(むしろ無い方がいい)シロモノだが、外に出て3分歩いてコンビニでアイスを買い、また3分歩いて戻るうえでは、ブラジャーが必要かどうかは議論の余地がある。

 そもそも、私が「ブラジャー」と呼んでいるのは、肌に優しい素材でできたユルめのスポーツブラであって、ワイヤー付きブラなどというおそろしいものは既にこの家から根絶されて久しい。人体の一部をワイヤーで締め上げるなんて、2025年に生きる人類のすることではない、というのが私の持論だ。(こういうことを言うと必ず「垂れるよ」と言ってくる人がいる。ご忠告はありがたいが、よく考えてみてほしい。垂れたとして、生きていくうえでとくに困ることはない気がする)

 そんな脱ワイヤーブラ人間の私だが、どんなにユルめのスポーツブラやブラトップであっても「締め付け」は発生するし、なによりこの地球沸騰時代において、人体にTシャツ以外の布を一枚余計に装着すると考えただけで、暑さで気が遠くなる。しかもスポブラを装着するっていうのは、一度ズボンを脱いで下からスポブラの胴の輪っかを通してTシャツの腕を抜いてスポブラの肩紐を通すか、もしくは一度Tシャツを脱いで上からスポブラの胴の輪っかを通して肩紐を通すか、というどちらにしても七面倒くさい作業である。ダルすぎる。早くアイスが食べたいのに。下着に短パンとTシャツ一枚で外出できる夫が心底羨ましい。

 私は一瞬考えて、「首にタオルをかける」という裏技で胸元を隠してアイスを買いに行き、無事に帰還した。ほら、別にどうってことないでしょうが。そもそも田舎なのでコンビニの店員さん以外の誰にも遭わなかったけど。店員さんが女性で内心ホッとしたけど。こんなことを、この夏は毎週やっている。

2025.09.19(金)
文=月岡ツキ