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海と灯台プロジェクト #1
海と灯台プロジェクト #2
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海と灯台プロジェクト #26
あの「予言」に観光客も

ここで大関の皆さんに別れを告げ、我々は車で大阪、堺市に向かう。
海岸線に沿ってひたすらに走る。今しも、大阪では、夢洲という、いかにも砂上の楼閣めいた名前の土地で、万博が開かれている。
ついでに言うと、この日の前日は、かねて日本の漫画家と香港の風水師が「予言」していたという「大災難」の起きる日とされていたので、東京も、関西も、中華系の観光客がごっそり消えていた。
「予言」というのは、「まさか」と思っていても、なんとなくモヤモヤ気にしてしまうものである。かつて、『ノストラダムスの大予言』でも「一九九九年の七月に恐怖の大王が降ってくる」というのがあって、社会不安的な雰囲気になったことを覚えているので、このところ、似たような空気が漂っているのに困惑していた。
最近、別件で調べ物をしていて『ノストラダムス予言集』の原文を翻訳したものを読む機会があった。五島勉著のあの新書版の表紙を覚えている人はいても、あの本、ましてや元の本を読んだことのある人はほとんどいないのではあるまいか。
十六世紀のフランス語で書かれた原作は、とにかく読みにくい。「予言詩」という名目で書かれているが、この本、出版直後から著者自身がちまちま改訂を繰り返していて、おまけに息子をはじめ、のちのちまで多くの人が勝手に注釈本だのなんだのを作っているので、なんと二百以上もエディションがあり、もはやどれがオリジナルか分からないというのだ。しかも、ノストラダムス本人も煙に巻くような発言しか残さず、いかようにもとれる似たような「詩的」な記述が続いている上に、「予言詩」と言いつつ、過去に起きたことや思い出話なんかも混ざっているので、出版当時から「深読み」を誘うつくりになっていた、ということだけは理解できた。
大関酒造今津灯台(兵庫県西宮市)
所在地 兵庫県西宮市今津真砂町5
アクセス 阪神久寿川駅下車、車で約10分。
灯台の高さ 6.7m
初点灯 1810年
海と灯台プロジェクト

「灯台」を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、日本と世界をつなぎ、これまでにはない異分野・異業種との連携も含めて、新しい海洋体験を創造していく事業で、「日本財団 海と日本プロジェクト」の一環として実施しています。
https://toudai.uminohi.jp/
◎物語を通して「海」の未来を考える
2025年7月21日の海の日に、作家の伊与原新さんが、直木賞受賞作『藍を継ぐ海』を起点に、「自然と共に生きるとは何か」「未来の海を守るためにできることは?」など、日本財団「海と日本プロジェクト」で、3万件以上の取組を手がけてきた海のプロフェッショナル・海野光行さんと対談。小説×科学×社会が交差した1時間は、inter fmラジオ番組「OCEAN BLINDNESS」9月7日(日)10:00~10:40にて放送予定です。

オール讀物 2025年 9・10 月号 「総力特集」第173回直木賞発表該当作なし [雑誌]
定価 1,500円(税込)
文藝春秋
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その土地の物語を読み解く
“灯台巡り”の旅へ
2025.09.17(水)
文=恩田 陸
写真=橋本 篤
出典=「オール讀物」2025年9・10月号