この記事の連載
中園ミホさんトークショー【前篇】
中園ミホさんトークショー【後篇】
一人ひとりの登場人物に『アンパンマン』のキャラクターを設定

塚原 ドラマで主演を務めていらっしゃる今田美桜さんについて、中園さんはどんな印象を持っていらしたんでしょうか。
中園 今回のヒロインのオーディションは3,300人以上という史上最多の参加者数だったんですけど、最終オーディションでは今田さんを含め複数人に絞られていて、衣装をつけて、あるシーンを演じてもらいました。その演技を見て、あぁこの役は今田さんだなって思いましたが、私の意見は言わずにいたら、監督や他のスタッフたちも「のぶにぴったりだね」と。
それで、今田さんに決まった後で、『アンパンマン』のドキンちゃんのイラストと今田さんの写真を見比べたんです。なぜなら、実はやなせさんがドキンちゃんのモデルは暢さんですっておっしゃってるんですよ。
塚原 え、そうなんですか!

中園 だからちょっと比べてみたら、あまりにもそっくりで(笑)。ドキンちゃんのあの目とか眉毛の感じとか、もうみんなで「やっぱり今田さんだったね」って。さらに不思議なことに、今田さんは子どもの頃からずっとドキンちゃんが一番好きだったんですって。
塚原 ドキンちゃんってバイキンマンと一緒にいる、好奇心の強い女の子ですよね。
中園 そうそう、ちょっとやんちゃな。今田さんはドキンちゃんが大好きだったんです。だから、やっぱり何か縁があるんだなぁって。
塚原 ドキンちゃんのように、『アンパンマン』のキャラクターと登場人物をリンクさせながらお書きになった部分はあるんですか?

中園 ありますね、自分の楽しみのために。『花子とアン』を書いた経験から、朝ドラがどんなに大変なものか分かっていたので。しかも年齢もそれから10年たっているから、もうキツいことになるのはすごく分かっていて。
だから何か自分の楽しみになるようにと、名前のある登場人物は全員にカッコ書きでキャラクターの名前を書いていました。ヤムおんちゃんはジャムおじさんで、羽多子さんはバタコさんとか。小さい役にも全部何かしら当てはめてあるんです。
塚原 そうだったんですね。
中園 最初は本当に内輪の打ち合わせだけで使おうと思ってたら、スタッフさんもそれにイメージを合わせるようになって、蘭子がロールパンナちゃんのブルー、メイコがメロンパンナちゃんの緑色の洋服を着ていたり。やなせさんが一緒に書いてくださっているような気持ちになって、ずいぶん励まされました。
中園ミホ(なかぞの・みほ)
東京生まれ。脚本家。日本大学芸術学部放送学科卒業後、広告会社勤務。退社後占い師として活動後、1988年「ニュータウン仮分署」で脚本家デビュー。代表作に「やまとなでしこ」(2000年)、「ドクターX 外科医・大門未知子」(2012~2024年)、「花子とアン」(2014年)など。現在は、占いサイト「中園ミホ 解禁!女の絶対運命」の監修も手掛ける。
連続テレビ小説『あんぱん』展
※同時開催「やなせたかしと三越〜3頭のライオンとの出会い〜」
会場:名古屋栄三越(名古屋市中区栄3-5-1)
会期:9月10日(水)〜29日(月)

2025.09.05(金)
文=張替裕子(ジラフ)
写真=細田 忠