人気絶頂のさなか、事実婚を選択し、公表した俳優の黒島結菜さん。その決断は、多くの人々に新しい家族のあり方や多様な生き方の可能性を感じさせました。
今回は、出産や子育ての経験から感じたことから、婚姻制度への疑問、理想の家族像に至るまで、率直な言葉で語っていただきました。黒島さんの選択の裏側にある、揺るぎない信念とは。
事実婚と出産、私が選んだ夫婦のかたち

――事実婚を選択されてから、ご自身の価値観で何か変わったところはありますか?
黒島 あまり変わっていないかもしれません。その決断に至るまでに、今後の自分の人生について十分悩んだので。
――選択に至るまでの悩みは、どのようなものだったのでしょう。
黒島 ありがたいことに仕事も順調で、ひとりの人生が楽しくて、以前は結婚したり子どもを育てたりということはまったくピンときていなかったんです。ですが、朝ドラという大きな作品を成し遂げて、これまでの人生にちょっと満足してきたというか。そもそも私は最初からパートナーとは、「ずっと一緒にいることはできるけど、結婚には興味がない」という思いを共有していました。だけど「今のパートナーとだったら子どもがいる人生も面白いかも」と、なんとなく思えるようになってきたんです。
そのタイミングで友達が結婚して、「そっか、苗字変わったんだね」と言ったら、「違う、相手が変わったんだよ」という話を聞いてハッとしました。そうか、別にどっちが変えてもいいのか。私は「結婚したら女性が苗字を変えなきゃいけない」と思い込んでいたことに、その時気がつきました。そこから苗字を変えずに子どもを育てられるのか、子どもが不利益を被らない方法はあるか、いろいろ調べ始めました。
――それが事実婚の選択につながったわけですね。
黒島 私が結婚にあまり興味がなかったのは、「自立していたい」という思いが強かったからなんです。あと単純に、苗字を変えるのが面倒だと感じたことも正直な理由の一つです。そんな中で、法律上の籍を入れなくても、ちゃんと普通に子どもを育てられるんだとわかったことが大きくて。「それぞれ自立しつつ責任を分け合えたら、子どもを産み育てることができるかもしれないね」とパートナーと話し合いました。苗字という自分のアイデンティティを大事にしたいという思いは、互いに同じでした。
――以前は結婚に対してどのようなイメージをお持ちでしたか?
黒島 実は10代の頃は「24歳で結婚して子どもを産む」と思っていたんです。そして24歳になり、「結婚ってなんだろう?」と改めて考えるようになって。その際に、「結婚=幸せ」「結婚して子どもを持つのが普通」「授かり婚は順番がおかしい」といった、結婚に対して社会的に広く共有されているステレオタイプについての疑問が芽生えてきました。戸籍の制度についても調べたりして。籍を入れないということは、それこそ「子どもの苗字はどうする?」とか、自分たちで考えて決めなければならないことが増えるんですよね。でもそれが、お互いの考えを伝え合う良いきっかけにもなっているなと思います。
2025.09.05(金)
文=綿貫大介
写真=松岡一哲
スタイリング=清水奈緒美
ヘアメイク=加藤 恵
CREA 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。