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霞ヶ関駅での乗り換えに戸惑った過去

――二宮さんは映画の舞台となっている地下通路や地下鉄を、普段利用されることはありますか?

 僕は使うことはあります。特に演劇を見に行く時とかは、地下通路と直結してる劇場も多くなってきたし、何より時間に正確なので地下鉄を使うことは多いですね。

 それこそ初めて行く駅や、改修されて様変わりしている駅は、シンプルに迷ってしまう。そうした体験は、原作とも、この映画とも共通しています。どこに行っても同じみたいな駅や通路もあるし、それこそほんとにこの映画に出てくる“異変”っぽい出口もあったりとかもするし、面白いなあと思って見ています。

 僕も若い時に自分1人で地下鉄に乗って現場に行っていたので、最初はすごく迷いました。霞ヶ関駅で、千代田線から日比谷線に乗り換えるだけでも、「どうなってるんだ、これ?」ってなりましたね。

 そのあと、どんどん路線が増えて、知らない駅も出口も出来て。実は東京なんか穴だらけなんじゃないかと思ったりもするし、大江戸線はどこまで下がっていくんだみたいな(笑)。でも男の子はちょっと嬉しいんですよね、それが。

 日常生活では「大江戸線、遠いな」とか思うんだけども、通路を降りていくときのわくわく感は割と好きだし。いまだに変わってない駅とかに行くと、自分が小さい頃に通ってたことを思い出したりもするし。そして地上に出ていくと、町が変わっていて、なんかちょっとエモくなったりもする。僕は移動手段としてはバスとかも使うタイプですけど、今回『8番出口』をやってから、さらに地下鉄や地下通路への見え方が増えたし、これを作った人たちはマジですごいなって思います。

【前篇】「途中からみんな台本を読まなくなって…」キャリア初の脚本協力、二宮和也が『8番出口』で辿り着いた〈ものづくり〉

二宮和也(にのみや・かずなり)

1983年6月17日生まれ、東京都出身。1999年に嵐のメンバーとして「A・RA・SHI」でCDデビュー。俳優としては『青の炎』(03年)で初の映画単独主演を果たし、2006年にはクリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』で主要キャストの1人を演じた。2015年に『母と暮らせば』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。最近の主な出演作は『浅田家!』(20年)、『ラーゲリより愛を込めて』(22年)、『アナログ』(23年)など。

『8番出口』2025年8月29日公開

白い地下通路を歩き、8番出口を探す男。しかし何度もすれ違う男に違和感を覚え、やがて自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。

出演:二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
監督:川村元気
原作:KOTAKE CREATE「8番出口」

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2025.08.27(水)
文=石津文子
写真=太田好治