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出演俳優を徹底解説! 中村歌昇、尾上左近

陸奥守吉行役/中村歌昇

 今回「とうかぶ」初登場となる陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)。坂本龍馬の愛刀であり、暗殺されたときにも携えていたと言われます。現在は坂本家からの寄贈を受けた京都国立博物館に所蔵されています。刀剣男士としての陸奥守吉行は、土佐弁を話し、銃を携帯してます。

 演じるのは四代目 中村歌昇(かしょう)さん(屋号・播磨屋)。ふたりの息子さんも既に舞台に立っています。

 陸奥守吉行同様、今回が初の参加。再演も決まっていない頃から、松也さんに「とうかぶ」に出てみたいと話していたそうです。その後、松也さんからオファーを受けて即快諾。源実朝役と二役での出演となりました。

 健康的な肌色で、長着に裾を脚絆で絞った袴姿というすっきりした出で立ちの陸奥守吉行と、白塗りで、高貴でゆったりとした雰囲気の実朝との早替り、演じ分けも大きな見どころです。

 ちなみに実朝は和歌に優れ、本篇にも和歌を詠む場面があります。百人一首の「世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ 海人の小舟の 綱手かなしも」でご存じの方も多いかもしれません。

加州清光役/尾上左近

 新選組は沖田総司の刀であったとされる加州清光。「扱いにくい刀」を自称しながら、主に対して「可愛がってね」と求める、今っぽい性格の刀剣男士です。同じく幕末に存在していた陸奥守吉行とは主同士が対立していたという因縁がありますが、陸奥守吉行のほうはまるで気にしていない様子……?

 演じる三代目 尾上左近さん(屋号・音羽屋)は、四代目 尾上松緑さんの息子さんで、今回の出演者のなかでは最年少の19歳です。実朝の妻・倩子姫役と二役を演じており、たおやかな女形の姿も見どころです。人妻役は初めてなのだとか!

 現代っ子で一見華奢な左近さんの雰囲気が、見た目にこだわる加州清光にぴったりハマっています。陸奥守吉行と一緒に行動することに対しやや不満気な様子の男士を演じる一方で、円満な夫婦の妻も演じるという、歌舞伎俳優の変幻自在ぶりも同時に楽しめます。

2025.08.07(木)
文=宇野なおみ
写真=佐藤 亘