この記事の連載

 映画『国宝』で注目を浴びている歌舞伎。見に行きたいけれど、やっぱり伝統的な歌舞伎はちょっとハードルが高い……と感じている方もまだまだ多いと思います。

 歌舞伎の世界は400年にも及ぶ歴史の中で生まれた古典の名作を上演しながら、新作の歌舞伎を創り、常に新境地を切り開いてきましたが、初心者でも親しみやすいのがこの新作歌舞伎。

 なかでも、2025年に誕生10周年を迎えたゲーム『刀剣乱舞ONLINE』を原案とした歌舞伎は、ゲームの世界観が好きな人はもちろん、派手な演出で歌舞伎初心者の“ファースト歌舞伎”としてもうってつけです。

 『刀剣乱舞』初の歌舞伎化は、2023年のこと。この公演は大好評のうちに幕を閉じ、2025年7月からは、待望の第二弾『歌舞伎刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)』が、東京(新橋演舞場)、福岡(博多座)、京都(南座)の三都市で上演されています。

 今回は、歌舞伎歴を愛するライターが、皆さんが『歌舞伎刀剣乱舞』(通称:とうかぶ)をたっぷりと楽しめるようにお手伝いいたします。


雪降りしきる鶴岡八幡宮で何かが起こる…! 今回の「とうかぶ」は鎌倉が舞台

 初演では十三代将軍足利義輝の治める室町時代が舞台でしたが、今回は源頼朝が鎌倉幕府を開いたことにより始まった武士の世が描かれます。刀剣が大きな役割を果たす鎌倉時代に向かう刀剣男士(戦士の姿になった、刀剣に宿る付喪神)は、三日月宗近、鬼丸国綱、髭切、膝丸、陸奥守吉行、加州清光!

あらすじ

 今回は外題の通り、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』 (『東鑑』とも書く)がモチーフ。といっても、北条家の話ではなく、雪の降りしきる鎌倉を舞台に、三代将軍・源実朝の鶴岡八幡宮における暗殺事件の“歴史改変”を防ぐため、刀剣男士が出陣することから物語は始まります。

 登場するのは尼御台北條政子や、源実朝とその妻の倩子(せんし)姫、そして実朝の甥にあたる前将軍の遺児・公暁(くぎょう)といった人々。さらに北条義時、三浦義村をはじめとする、鎌倉の重臣たちの思惑も絡み混迷する鎌倉幕府。

 一方、戦乱のために命を落とした人々の恨みが怨念となり、顕現していきます。そこに現れたのは“羅刹微塵”。源氏一族にゆかりがあり、実朝が「元の主」である膝丸・髭切はじめ、刀剣男士たちは、歴史の改変を防ぐことができるのか……。

 今回は2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を見ていた方には馴染み深い名前が並んでいるかもしれません。ちなみに今作で演出を務めた尾上松也さんも後鳥羽上皇役で出演していました。

 さらに、お芝居の最後につく舞踊「大喜利所作事」もありますので、最後まで見どころが満載です。

2025.08.07(木)
文=宇野なおみ
写真=佐藤 亘