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刀剣男士を演じる俳優をバックボーンも含め徹底解説!

 刀剣男士たちは、異なる時代に生まれ、彼らのバックグラウンドや逸話がそれぞれの性格や持ち物などに反映されています。また、歌舞伎の世界で「ニン」(漢字では主に「仁」と表記)と呼ばれる、その俳優の持ち味、その人らしさも大切なものとして捉えられています。

 初演に引き続き脚本を担当した松岡亮さんも、以前のCREA WEBのインタビューで「ニン」がいかに大切かをお話しくださいました。

 今回のキャスティングが発表された折、「やはりニンが意識されている」と感じました。ここからは劇中に登場する刀剣男士のキャラクター及び、演じる俳優について詳しく解説します。

三日月宗近役/尾上松也

 言わずとしれた『刀剣乱舞』の顔、三日月宗近(みかづきむねちか)は、現在は東京国立博物館に収蔵されている平安時代の刀、「天下五剣」のひとつを擬人化したキャラクター。自分のことを「じじい」と称するなど、おっとりとした品のある刀剣男士です。演じる二代目 尾上松也さん(屋号・音羽屋)は、テレビから映画、ミュージカルまで幅広く活躍する歌舞伎俳優。

 若くして歌舞伎俳優であったお父様を亡くされ、お弟子さんを抱え自らの足で立たねばならないという重圧のもと、様々な舞台で活躍し、歌舞伎でも大役、難役を演じてきました。よく通る声に涼やかな容姿を持つ、歌舞伎界の人気を支える名優のひとりです。

 初演に引き続き、今回も演出を手がけています。舞台装置や衣裳はもちろんのこと、グッズの監修までしたという八面六臂の大活躍。中村獅童さんいわく、ゲネプロ(最終リハーサル)当日にも立廻りやせりふの変更があったとのことで、そのこだわりぶりは、舞台の随所に見られます。

鬼丸国綱役/中村獅童

 北条時政の夢に出てくる「鬼」を退治した刀として有名な鬼丸国綱(おにまるくにつな)。三日月宗近同様、天下五剣の1本であり、現在は「御物」として皇室が所有、宮内庁が管理を行っています。そのためなかなか見ることはできないのだとか。

 本公演初登場の鬼丸に扮するのは、二代目 中村獅童さん(屋号・萬屋)。歌舞伎の名門・小川家の出で、いわゆる御曹司です。しかし、お父様が歌舞伎俳優を辞めていて、一般的には映画『ピンポン』のドラゴン役など、歌舞伎以外での活躍のほうが知られているかもしれません。絵本『あらしのよるに』をもとにした歌舞伎に出演したり、『超歌舞伎』で初音ミクと共演したりするなど、歌舞伎の「新境地」に大きく貢献しています。

 初演では声のみの出演でしたが、今回は舞台に初参加。「初演を見て息子が松也さんのファンになってしまい、パパも恰好いいところを見せたい」と参加を熱望したとのことです。どっしりと風格のある姿と殺陣、芯のある朗々とした声で、ベテランの凄みを存分に見せてくれます。なお、歌舞伎俳優の中ではかなりの長身ですので、鬼丸役はぴったりでした。

2025.08.07(木)
文=宇野なおみ
写真=佐藤 亘