本来なら学校に行っているはずのわが子が毎日家にいる。その姿を見る親や家族は、これほどつらく悲しく、無念なことはないと言う。学校も、そこにいるはずの子どもがいない、寂しく残念なことだと嘆く。子どもの数は減りながら、不登校は全国あまねく、男女の別なく、親の職業や家族構成にも関係なく、発生比率を高めて増え続けている。現在、いくらかの地域差はあろうが、小学生は約五十人に一人、中学生は約十五人に一人が不登校のようである。
また、教室でなく別室等に登校する子どもらを加えれば、その数はさらに増す。高校生は休学や退学、進路変更をする場合もあるので正確な数の把握は困難であるが、不登校の子どもたちの多くが進む通信制単位制高校の卒業率が、ごく少数の高校を除いて、3割程度と言われているので、学校不参加の子どもたちは膨大な数にのぼる。加えて不登校問題と密接な関連をもつ社会的引き籠もりの人たちの数を考えると、この問題はこの上なく深刻である。
学校は、人が人に成るための必修の学びと生活の場であり、就学して、学歴を取得するところである。わが国の学校教育は一律の就学を制度としている。そのおかげで私たち日本人は、等しく教育を受ける機会を得て、生きるために必要な知識や技能を習得する。また、人と時間を共有して、より好ましい人間性を身につけ、その人らしい意味ある人生を全うする時と場を得る。学校は個々人が価値ある人生を創造する貴重で大切な学びの場である。
不登校問題は一日も早い解決が必要である。再登校や再就学が実現したときの子どもたちの安堵とうれしい表情は、実に爽やかで美しい。周囲の喜びも一入である。私たち日本人は、この問題の発生を抑止し、子どもたちの再登校・再就学を具現するために、この問題を他人事にすることなく、愛と知恵、感性、行動力を結集して問題解決を図り、幸福感をともにする必要がある。
私はかなり長い年月、いくつかの心理職の資格を取得し、市井の片隅で、新生児から大学生までの子どもたち、親や家族、そして教師などのカウンセリング(教育相談)に携わってきた。子どもたちが抱えるあらゆる問題に関わってきたが、特に多かったのは不登校問題であった。
2025.07.01(火)