脚本家・ドラマプロデューサーとして30年以上のキャリアを持つパク・ソンスさんが、『韓国式ストーリーのつくりかた』を上梓しました。
本書は脚本家を目指す人へ向けた指南書となっていますが、普段から韓国ドラマを楽しんでいる人にとっては、制作の裏側を特別にのぞかせてもらえたような気分になれる一冊です。
今回は、“いま韓国エンタメ界が抱える課題”について一部を抜粋してご紹介します。
》【前篇を読む】韓国ドラマはなぜ世界進出できた?『勝手にしやがれ』『おいしいプロポーズ』脚本家が指摘する配信サービスの“問題点”

ドラマは、最近「お金になる」ものになった
地上波をテレビ局が独占状態だった時代は、ドラマを「産業」とは呼ばなかった。「娯楽なのか、芸術なのか」という居酒屋論争があっただけだ。
広告完売時代には、ドラマに市場競争の論理は必要なかった。
視聴率競争も、プライドと名誉をかけた闘いなだけで、視聴率1位を獲ってもインセンティブがあるわけではなかった。韓国では大手企業のCJがドラマ業界に参入してから、制作現場に「ドラマ産業」という用語が登場した。
ここから、「お金になるのか」がドラマをつくる最初の価値になったのだ。このドラマ産業にはどのような性格や特徴があるのだろうか?
この産業は、「成功の経験がある人」に投資する
ドラマ市場はスターに投資する。スター俳優の出演が確定すると、制作される。
台本の完成度は二の次だ。どんな台本であれ、スター俳優が出演するといえば「すばらしい台本」に昇格する。
スター作家の台本も、制作を決める要素の第1順位だ。この産業は、成功の経験に投資する。スター作家とスター俳優は、互いが互いを引き寄せるのだ。
しかしストリーミング配信サービス時代の到来で、スターばかりを起用する産業に小さな亀裂が生じはじめた。
新人のみをキャスティングして制作するドラマが始まり、その中でも『Sweet Home―俺と世界の絶望―』のように、ドラマの興行と共に新人出演者が「ライジングスター」として駆け上る場合も増えている。
2025.06.17(火)
文=パク・ソンス
翻訳=松原佳澄