この記事の連載
「人が……居たんです、上の階に」

「倒れるような物なんかあったか?」
「……というか、人自体、俺たち以外にいなかったって」
誰に聞かれるでもないのにやたら静かな足取りで階段を上っていたそのとき、息が首のあたりで詰まり、視界がグラリと揺れて意識が遠のくような感覚がKさんを襲いました。
「ちょっ、大丈夫っすか?」
気がつくと、Kさんは3階の階段で男の子たちに支えられていたそうです。
「なんか、突然フラついていましたよ!?」
「え……?」
朦朧としているKさんをよそに、2人は「ここに居てください、さっと上見てくるんで」と告げて行ってしまいました。
今の立ちくらみはなんだ。今日はしっかり水分は摂っていたし、熱中症になるような隙は見せていなかった。それに、この症状さっきの女の子と全く同じじゃないか……。
「うおわぁっ!!」
「逃げろ、逃げろ!!」
1~2分経った頃でしょうか。突如、上の階からドタバタと顔面蒼白で2人が降りてきたのです。
2025.05.05(月)
文=むくろ幽介