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男の子の背後で動く“何か”

 最上階の7階まで探索を続けたKさんでしたが、これといって目ぼしいものはありませんでした。

 本来は賑わうはずだった別荘地。

 確かに景色は良かったですが禍々しい空気はなく、心地良い風がKさんの気持ちを落ち着かせてしまいました。

「こりゃ、ここに泊まっても意味ないかなぁ」

 外の明りが徐々に陰りを見せ始めた午後。Kさんは探索に見切りをつけて一旦外に出ようと階下に降りることにしたそうです。

「あ、お姉さん」

「……どうも」

 4階付近まで降りたとき、さっきの大学生とまたバッタリ遭遇しました。

「僕らもう帰りますけど」

「え? ああ、私、車で来ているので大丈夫ですよ」

「そっすか……」

 当然Kさんを送ることになっていたかのような言い回しに戸惑っていると、突然、男の子の背後で何かが動くのが目に入りました。なんと、背後に立っていた女の子が貧血のようにグラリと揺れて、そのままその場にへたり込んでしまったのです。

 何事かと彼女の方を見た一同でしたが、当の女の子もキョトンとした顔で一同を見返していました。

「なんか、え、何これ……」

「え、どうしたの?」

 彼氏の子に支えられてフラフラと立ち上がった女の子でしたが、またグラリと、今度はKさんの方に倒れこんできたので、とっさに彼女の肩を支えました。

「おっと、大丈夫? とりあえず、1階まで行きましょう」

2025.05.05(月)
文=むくろ幽介