劇場版「名探偵コナン」と京都の老舗料亭の共通点は?

劇場版「名探偵コナン」の最新作『隻眼の残像(フラッシュバック)』が4月18日(金)に劇場公開を迎えるにあたり、脚本を書き上げたのは『相棒』『科捜研の女』でも知られる櫻井武晴氏。シリーズ7作目の参加となる彼はいかにしてヒットの立役者となったのか? 10年以上にも及ぶ足跡を語っていただいた。(はじめから読む:最新作公開目前! 劇場版「名探偵コナン」脚本家が語りつくすヒットの裏側「青山先生の説明にスタッフが衝撃を受けていて…」)
――先ほどの顔認証システムのお話含めて、櫻井さんは普段から情報収集を日課にされているのでしょうか。
そう思います。日常的にインプットしつつ「これを『名探偵コナン』のフォーマットで出すならこう、『科捜研の女』で出すならこう」とぐるぐる考えています。直近だと、食料供給困難事態対策法が政府の緊急事態条項と結びついたら最悪の場合どういうことが起こるか、という想像から、じゃあそれを作品に活かすとしたら――と自然と考え始めていました。
――先ほどのお話にあった、脚本とアフレコ台本の違いの話も驚きでした。
これは劇場版「名探偵コナン」特有の流れかもしれません。実写だと僕が書いた脚本を俳優さんが演じますが、本シリーズでは僕が書いた脚本を下敷きにしたアフレコ台本を声優さんが演じる形で進んでいます。
毎シリーズ、どのようにストーリー構成を考えているのか

――『黒鉄の魚影(サブマリン)』では阿笠博士の新たな一面が見られたり、『隻眼の残像(フラッシュバック)』では蘭・元太・光彦のレアなタッグを拝めたりとキャラ愛&解像度の高さが本シリーズの魅力の一つですが、いまお話しいただいたようなカラクリがあったのですね。
こちらがセレクトして並べる場合もありますが、書いていくうちに登場人物たちが独りでに動き出してくれるのです。蘭・元太・光彦の3人のシーンは自然発生的なものでした。今回だったら「敢助の過去話を書いて下さい」というオファーを受けたときに、“宝物を探す”という意識を僕は持っています。
ここでいう“宝物”とは物語を構成する「要素」のことです。要素を探し、並べ方を考える。その際に「どんなシーンにしたいのか」の基準を設ける、といった形で骨格を作っていくのです。面白いシーンや泣けるシーンなど、基準に応じた並べ方がありますから。
もちろん実際はそんなに単純ではなく、「胸に迫るシーンにしてほしいけれど謎解きの伏線でもあってほしいし、人物紹介のシーンも兼ねてほしい」といった局面もあります。ただそんな中でも、最優先は何なのかを迷わないようにするための柱として“宝物”という言葉を使っています。

今回だと敢助が属する長野県警には由衣や高明もいる、そこから派生する人間関係もありますし、過去話に踏み込むなら「雪崩」というキーワードはどうしても必要になります(敢助はある事件の捜査中に雪崩に遭って負傷し、隻眼になったという設定が原作&テレビアニメで既出のため)。では「雪崩」の中にある“宝物”は何だろう? と考えて、雪山や天文台につながっていきました。

同じように「公安」の宝物は、降谷零/安室透や風見であり、公安が暗躍する話ならば、表の殺人事件を捜査するのは刑事警察で、その宝物は目暮や佐藤、高木――といった具合に。
2025.04.11(金)
文=SYO